高論卓説

今や「底なし」…市場を圧迫する3つのルート 待たれる“鎮静剤”

 新型コロナウイルスへの不安に覆われた世界の金融市場は、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁による声明や、米連邦準備制度理事会(FRB)の緊急利下げ後にいったん、小康状態に入ったかにみえたが、今や「底なし」の混乱に多くの参加者が身構えている。

 日本国内では、2月26日に安倍晋三首相が要請した「イベント自粛」がいつ終了するのか注目されている。仮に「2週間」たった今月11日にもう2週間延長されても、社会やマーケットは織り込み済みと認識するのではないか。しかし、4月初めになっても国内で感染拡大が続き、イベント自粛や小中高の休校が継続するようなら、大きな反応がありそうだ。コロナ問題の大きな山場は、4月上旬に来る。

 9日の日経平均株価は2万円の大台を割り込み、円相場は一時、1ドル=101円台まで円高が進んだ。新型ウイルスが米欧で拡大し、サウジアラビアが原油増産に転じ、原油価格が急落。世界の金融・資本市場は「底が抜けた」ような状況になっている。

 さらに国内経済を支えてきた消費関連が、大幅な売り上げ減少に直面している。この状況が長期化すれば、2011年の東日本大震災や08年のリーマン・ショック時に直面したような経済的苦境に陥りかねないと、多くの人々がうすうす気付き始めている。

 この先を展望する上で、1つの節目は今の自粛期間が終了する11日だ。テレワークも13日を当面の区切りとしている企業が多く、それ以降はイベントを含め、事態がどうなるのか大きな注目を集めている。ただ、新型ウイルスの感染者が増加している現状をみると、イベント自粛が解除される可能性は低いだろう。延長後、4月初めになっても感染者の拡大ペースに衰えが見えず、イベント自粛期間がさらに延長された場合は、市場の混乱に拍車をかけかねない。

 市場を圧迫するルートは3つ考えられる。1つ目は、自粛が1カ月を超えることで、消費関連の売り上げ減少が広範な分野で顕在化し、パートタイムやアルバイトの解雇が増え、消費者に最も近いところで「異変」が鮮明になることだ。この部分の動揺は社会的なインパクトも大きく、内閣支持率にも波及しかねない。

 2つ目は、日本での感染拡大が誰の目にも明らかになり、外国から日本に対し、渡航制限を強化する動きがさらに広がることだ。米国が日本との往来を禁止・制限する事態となれば、両国間のビジネスに大きな影響が出かねず、経済活動の大幅な制約要因となる。

 3つ目は、7月24日に開会式が予定されている東京五輪が本当に開催されるのかという疑念の広がりである。海外勢の投資行動に影響するだけでなく、日本国内における消費者や企業経営者の心理にも悪影響を及ぼすに違いない。

 FRBが18日に0.5%の利下げを行うと市場は織り込み、日銀も19日に何らかの緩和効果をもたらす対応をすると予想されている。しかし、それを前提に市場が「動揺」している。やはり、今回は新型ウイルスを撃退する「特効薬」の登場が、市場の鎮静剤になるだろう。それまでは、財政・金融政策で「時間を買う」しかないが、だんだんと弾薬の在庫がなくなってきているのが心配だ。

【プロフィル】田巻一彦

 たまき・かずひこ ロイターシニアエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経て、ロイター副編集長、ニュースエディターなどを歴任。東京都出身。

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