主張

大荒れの金融市場 動揺阻止へ首脳が結束を

 新型コロナウイルス感染の世界的な拡大が収まらないことへのパニックなのか。世界中で大荒れが続く市場の動きに歯止めがかからない。

 東京株式市場の株価が節目の2万円を割った。円高ドル安も進み、一時1ドル=101円台という約3年4カ月ぶりの円高水準になった。

 企業の海外収益が円高で目減りすることへの懸念が一層の株安を招くという悪循環だ。リーマン・ショックや東日本大震災以来の深刻な状況と認識すべきである。

 安倍晋三首相は国会答弁で「世界経済の動向も十分に注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済、財政政策を行う」と述べた。

 ただ、先進国、新興国を問わずに広がる動揺を抑えるには、同時に国際社会が結束を強める必要がある。そのための具体的行動をいかに発信できるかだ。首相は、首脳による緊急協議を早急に開くよう各国に働きかけてほしい。

 6日には20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁が政策を総動員する用意があるとする声明を出したが、週明けの市場を抑えられるほどの強いメッセージとはならなかった。もはや閣僚級ではなく、首脳同士が感染対策や経済政策について具体策を論じ合う局面である。

 まずは、先進7カ国(G7)やG20で、行き過ぎた為替変動が世界経済に及ぼす悪影響の認識を共有し、これを阻むために、協調介入を含む断固たる行動を取ることを明確にすべきだ。財政・金融政策でどう協調するのかを具体的に打ち出せるかも問われよう。

 この問題がやっかいなのは、どこまで実体経済を悪化させるのかが全く見通せないことである。各国の政策対応がそろいにくい事情もある。例えば、利下げに動いた米国に対し、マイナス金利政策の日銀に緩和余地は少ない。どこまで財政出動が許されるかも各国で異なろう。だが、どの国も必要に応じて、大胆な追加措置を講じるべきは当然である。

 残念なのは国際社会の結束に揺らぎがあることだ。感染拡大で石油需要の減少が予想されるのに、産油国による協調減産の協議は決裂した。日本政府の入国制限を曲解し、すかさず対抗措置を講じた韓国もそうだ。今は対立しているときではない。その点を各国の首脳は銘記すべきである。

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