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中国、非公有制企業に支援届かず 「どこの銀行に行けば、貸してくれるのか」

 中国では新型コロナウイルスの感染者数が減ってきたとはいえ、まだ鉄道や航空などの交通の回復は遅れており、企業の生産再開も十分でない状況が続いている。経済への打撃は大きいが、中でも深刻なのが中小企業や私営企業などの非公有制企業。中国政府は支援策を発表しているものの、あまり浸透しておらず、多くの企業が瀬戸際に追い詰められている。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 中国政府は2月以降、国務院(内閣)常務会議などの場で数回にわたって中小企業や私営企業などの非公有制企業に対する支援策を打ち出している。増値税の減免、優遇金利での貸し出し、企業が負担する社会保障費の減免などである。

 ところが政府には、対象となる企業からの苦情が殺到している。「支援策は発表されたが、いつになったら恩恵を受けられるのか」「生産再開したくても、させてくれない。このままでは顧客を失ってしまう」「コメなどを売ろうとしても、配達の通行証が手に入らない。このままではコメは劣化してしまう」などだ。とりわけ銀行への不満が多い。「銀行は中小企業や非公有制企業には貸してくれない」「賃金や家賃の支払いはインターネット金融でなんとかやり繰りしているが、利息が高すぎる」「商業銀行に掛け合ってみたが、何の反応もない。どこの銀行に行けば、貸してくれるのか」といった具合だ。

 中国で中小企業と非公有制企業が全ての企業に占める割合は、足元でなんと99.8%とされる。

 その中心となっているのは私営企業で、このところIT関係など新興産業での発展がめざましい。私営企業については「税収の5割、国内総生産(GDP)の6割、イノベーションの7割、就業者数の8割以上、新設企業の9割以上」を占めているといわれている。いまや経済発展には欠かせない存在である。

 ところが中小企業を対象とした調査によると、手元の流動資金が1カ月分しかないとの回答が全体の約3分の1もあった。2カ月分以下となると、約3分の2も占めている。感染者が急増し、経済に影響が出始めてから、既に2カ月近い。一刻も早い救済が待たれる。

 中小企業の資金不足は日本でも問題になっているが、中国の場合はより深刻である。中国の銀行は中小企業、とりわけ私営企業にはなかなか融資をしたがらないという悪弊がいまなお、強く残っているからだ。

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