海外情勢

移動制限で農業壊滅的 外国人頼みあだ、春の収穫控え人手不足深刻

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国が入国制限などの措置を相次ぎ打ち出す中、収穫などの作業を外国人労働者に頼っていた農業セクターが危機にひんしている。春の農繁期を控える農家は深刻な人手不足に頭を悩ませており、国民の食卓にも影響が及ぶとの懸念も高まっている。

 食肉加工にも影響

 在メキシコ米国大使館は16日、「H-2Aビザ」に基づく季節農業労働者を含む米国行きのビザ(査証)取得希望者の面接を無期限で停止すると発表した。米国は特に野菜や果実の収穫の担い手として外国人労働者が欠かせず、農家はこれらの収穫に壊滅的な影響が出ると警告している。

 オーストラリア政府も先週、海外から入国するすべての渡航者を対象に2週間の隔離措置を実施すると発表。同国の季節農業労働者は3分の1を海外の労働者が占めるため、農家はこの措置により一部の青果が不足する可能性があると指摘する。同様の措置を取るニュージーランドでもキウイフルーツの収穫の担い手が不足するほか、慢性的な人手不足を外国人労働者で補っていたカナダの食肉加工業者も深刻な打撃を受ける可能性がある。

 生鮮青果の業界団体である米国生鮮青果物協会の公共政策担当シニア・バイスプレジデント、ロバート・グンサー氏は「収穫作業の担い手がいない。このことは生産者だけではなく、最終的にはサプライチェーン(供給網)や消費者にも壊滅的な打撃を与えるだろう」と指摘する。

 今後、食品価格高騰も

 人手不足の懸念の高まりは、世界の農業セクターにおける外国人労働者への依存度の高さや、食料供給網の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにする。現在、多くの主要な食料供給国では、トマトの収穫、食肉加工、家畜の飼養といった過酷な作業を外国人労働者に頼っているのが実情だ。

 一部地域では農作業が本格化するシーズンであるため、農家からは「最悪のタイミング」だとの声も上がっている。例年の同時期には、北半球の農家が春の繁忙期と夏の生育期に向けた準備に取り組む一方、牧場主も飼育した家畜の出荷を増やす傾向にある。

 イタリアの農業生産者団体「コルディレッティ」によると、イタリアでは暖冬による影響で一部の農作物の生育が早まり、収穫の前倒しが状況を悪化させている。少なくとも年間に37万人の外国人労働者を受け入れているため、国境封鎖は「深刻な影響」をもたらす可能性があると指摘している。

 ドイツ農業者連盟(DBV)のウド・ハンマリング事務次長によると、ドイツのアスパラガスとイチゴの農家は春の収穫時期における人手不足を懸念しているという。ドイツの農家は主にポーランドやルーマニアなどからの季節労働者に頼っており、これらの労働者は帰国した際に隔離措置の対象になる可能性があることを恐れている。

 移動制限などの措置による影響が長期化すれば供給が細り、食品価格がさらに高騰する可能性が高い。そうなれば、国民の食卓にも大きな打撃となりそうだ。米国最大の農業団体であるファーム・ビューローのジッピー・ドゥバル会長は「新たな規制により、米国の農家はこの重要なシーズンにおいて熟練した外国人労働者を活用できなくなる。こうした状況は米国の食卓に食品を供給する私たちの能力を脅かしている」と訴えた。(ブルームバーグ Mike Dorning、Pimm Fox)

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