海外情勢

豪の再エネ、政策やインフラ懸念で海外マネー退潮 投資に逆風

 空からは陽が降り注ぎ、沿岸部では風が強く吹く-。自然環境に恵まれたオーストラリアの再生可能エネルギー部門は何十億ドルもの投資資金を引き付けてきたが、豪政権のエネルギー政策の不透明性や送電網インフラ整備の問題で海外からの投資に陰りが出ている。

 JLG撤退で鮮明

 豪州の再生可能エネルギー部門への新規投資は50年来右肩上がりで推移してきたが2019年に初めて減少に転じ、過去最高を記録した18年の水準をおよそ60%下回った。

 ロンドンに拠点を置く建設会社ジョン・レイン・グループ(JLG)が今年3月に豪市場からの撤退を表明したことで、海外からの対豪投資の衰微が浮き彫りになった。JLGは豪州全土で再生可能エネルギーの資産を売却する方針で、撤退を決めた主な理由として(発電所から需要家に電気が供給されるまでの間に失われる)送電損失を挙げている。

 オリバー・ブルース最高経営責任者(CEO)は「送電系統の運用者が送電線容量を拡大する以上のペースで新規プロジェクトの発電所が稼働を開始している」と説明。JLGは19年に豪再生可能エネルギー資産で5200万英ポンド(約67億円)の損失を計上した。

 豪公共政策シンクタンク、グラタン・インスティテュートが昨年発表した報告書によれば、老朽化した石炭火力発電所の閉鎖に伴い、豪州は今後30年間に約4000億豪ドル(約26兆円)規模の新たな実用規模の発電資産が必要になる公算が大きい。最も低コストな選択肢としてその多くが太陽光、風力発電になる可能性は高く、揚水発電や大型リチウム蓄電施設の導入で安定性を確保することになる。だが、モリソン豪首相は化石燃料を擁護し、深刻な森林火災や干魃(かんばつ)に見舞われても、炭素排出の削減目標を強化しようとしない。

 当局の判断に失望

 豪太陽光発電会社ニュー・エナジー・ソーラー(NES)のジョン・マーティンCEOは「国際投資家は現在、投資に極めて慎重になっている。エネルギー政策の合意不足や過度に複雑な市場設計のほか、送電線の利用や系統内の混雑、限界送電損失率(MLF)、出力の抑制といった個々のプロジェクトが抱える悩みなど、さまざまな解決不可能な問題があるとみている」と話す。

 現行のMLF規制をめぐって再生可能エネルギー業界が変更を求めていた件について、豪規制当局は2月にこれを退けた。

 ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)のアナリスト、サハジ・スード氏は「JLGの撤退発表と合わせて、今回の規制当局の判断は投資家をいらだたせ、豪州における大規模な太陽光、風力発電への投資の見通しを損なわせる」と指摘している。(ブルームバーグ James Thornhill、Matthew Burgess)

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