海外情勢

無人搬送車が中国で快走 新型コロナ受け需要急増

 新型コロナウイルスの感染拡大で中国や世界各地の多くの企業が痛手を受ける中、ウイルス流行を追い風に需要が急増している企業がある。北京に拠点を置く無人搬送車のスタートアップ企業、新石器(ネオリックス)だ。

 インターネット通販最大手アリババグループやフードデリバリー事業を展開する美団点評、大手ショッピングサイトを運営する京東商城などを顧客に持つ新石器は、昨年5月の生産開始以降、125台しか製造していなかったのに、過去2カ月で200台以上を受注した。同社の創業者で最高経営責任者(CEO)を務める余恩源氏がインタビューで答えた。

 物理的な接触減らす

 新型コロナへの懸念から企業やサプライチェーン(供給網)に支障が出る中、中国は自律走行の交通手段や配送の将来を担う技術を推進してきた。そうした取り組みが予期せぬ追い風を受けている。新石器の小型搬送車は顧客との物理的接触を減らし、長引く隔離や移動制限による労働者不足に対応する上で役立っている。

 新石器の車両は今回の新型コロナの震源地となった武漢などの病院で医療品の運搬に用いられており、感染が拡大する中で在庫が激減している。同社の車両は道路の消毒に用いられているほか、新型コロナの感染拡大を阻止するために最前線で働いている人々への食糧配達にも利用されている。

 余CEOは「新型コロナの発生以来、需要は急増している。何よりも、無人配送に対する人々の認識が完全に百八十度変わった。人手に頼ると危険を伴う場合、安全に処理できると人々は実感している」と話す。

 アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は3年前、中国国内の配送件数が10年以内に1日当たり10億件に達すると予測し、無人配送技術の商用化を自動運転車に生かすことができるとの考えを示した。現状で自動運転車の公道走行はまだ規制されている。ただ、新型コロナの感染が前例のない規模で広がる状況下で道路には人気がなくなり、規制上の障壁は緩和されつつある。

 コンサルティング会社オートモビリティ(上海)のビル・ルッソCEOは「人々のネット通販への移行に伴い、今回の危機を通して中国のデジタルサービスが生み出す経済が繁栄している。このことが自動配送サービスの商用化を加速させる。新石器などは勝ち組だ」と説明する。

 余CEOの話では、中国の地方政府は管轄区における無人搬送車の購入、運用に対し、定価の最大6割まで奨励金を拠出しているという。新石器によると、政府補助金が車両の販売を促進するといい、今年1000台の販売を見込む。

 余CEOは「この業界は新型コロナによって急速な拡大期に入った」と語る。

 終息後は「新常態」も

 自律走行の搬送車の開発が加速しているのは中国だけではない。新石器の米国におけるライバル会社、米配送ロボット会社、ニューロは先月、米連邦政府から初めて、自動運転搬送車について安全規定の適用除外を認められ、近隣への生鮮食品の自動配送計画実現に向けて大きな一歩を踏み出した。今回の認可は2年間有効で、特別仕様のロボット車が米国内の公道を走行できるとする米運輸省の規制当局の考えを示唆している。

 余CEOは「自動運転の搬送車を開発している企業全てにとって、大きな前進だ」と強調する。

 それでもまだ業界ウオッチャーの中には、目先の見通しについてより慎重な姿勢を崩さない向きもいる。中国の自動車業界団体、全国乗用車市場情報連合会(乗連会)の崔東樹・秘書長は今の需要を一時的なものだとみており、当面は中国の労働コストが比較的低いことが自動運転配送の販売促進を損なう恐れがあると指摘する。

 一方、ルッソ氏は新石器のような企業の受注の伸びが今後の需要にもつながるとみる。同氏は「新たな習慣が形成され、新たな性能が要求される。消費パターンは大きく変化しており、新型コロナ終息後の世界のニューノーマル(新常態)において、(無人搬送車は)必要不可欠なツールと見なされる可能性が高い」と指摘した。(ブルームバーグ Tian Ying)

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