海外情勢

インドネシアでAI人材育成 技術者確保へ日本企業が取り組み

 日本で人材不足が指摘される人工知能(AI)技術を活用できる人材をインドネシアで育成する事業に、AI開発を手掛ける日本のベンチャー企業「グリッド」(東京都港区)が取り組んでいる。世界的な人材獲得競争が激化する中、日本で活躍する優秀な技術者を確保するとともに、将来は母国での社会問題解決にAI技術を役立ててほしいとの考えだ。

 2009年創業のグリッドは15年にインドネシアに関連会社「リノーム」を設立。平日の夜、仕事帰りの会社員らがジャカルタ中心部の高層アパートの一室に集まった。スクリーンにはプログラミングの数式が並ぶ。

 リノーム社が昨年5月から始めた、AIの技術やビッグデータの解析を扱う「データサイエンティスト」の教育プログラムだ。初心者から基礎までの3カ月と中級までの6カ月のコースがある。

 普段はオンライン学習だが、受講料850万ルピア(約5万7800円)の6カ月コースでは直接、講師役の社員から教わることもできる。既に計約50人が受講した。

 受講者の20代女性、チトラさんは銀行員。「現在の仕事の財務分析に生かしたい」と話す。リノーム社によると、データサイエンティストは給与水準が高く、エンジニアだけでなく、会計や広報の仕事をしていた社会人が転職のため受講するケースも多いという。

 インドネシアではインターネット通販「トコペディア」や配車・配送サービス「ゴジェック」など自国発のデジタル企業が育ち「人材の潜在能力は高い」と、幹部で20代のレイさんは話す。

 リノーム社は日本に人材を送るだけでなく、受講者を同社でも採用しAIを使ったアプリを開発していく方針。既にショッピングモールの駐車場監視カメラの撮影データをAIで分析し、駐車場のどこが空きかを自動でスマートフォンの画面上に示すアプリを試作中だ。

 社長で30代のフェブリアン氏は、この技術を発展させ「どこが渋滞でどこが空いているかを予測するシステムを作り、(世界一とも言われる)ジャカルタの渋滞を解決したい」と語った。(ジャカルタ 共同)

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