海外情勢

食料価格危機が再燃兆し「戦時中と同様措置の可能性」 一部で穀物輸出規制

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界的に食料買いだめの動きが活発化する中、ロシアや中国など一部の国が穀物の輸出規制や食料備蓄積み増しに動き始めた。世界の食料のサプライチェーン(供給網)が阻害され、食料が高騰する可能性があり、自給率が低い国には大きな打撃となりかねない。

 戦時中と同様措置へ

 主要な小麦粉の輸出国であるカザフスタンは今週、ニンジン、砂糖、ジャガイモに加え、小麦粉の輸出を停止した。セルビアもひまわり油などの輸出を禁止。世界最大の小麦の輸出国であるロシアも輸出禁止の可能性を探っており、週1回のペースで協議を重ねている。

 また、世界最大のコメの生産国である中国は政府によるコメの購入量を過去最高水準まで引き上げると発表した。既に中国政府の貯蔵庫には国民に1年間供給できるほどの十分なコメと小麦の備蓄がある。

 食料のサプライチェーンや世界貿易を阻害するこれらの動きが今後、世界的な広がりを見せるかは不透明だが、英王立国際問題研究所のリサーチディレクター、ティム・ベントン氏は「“食料ナショナリズム”の兆候は既に表れており、今後さらに強まる」と警鐘を鳴らす。

 多くの国は今でこそ食料の十分な供給量を確保しているものの、新型コロナの感染拡大阻止に向けた封鎖措置により物流の停滞や消費者によるパニック買いが相次ぎ、一部の国では食料が行き渡りにくくなっている。

 ベテラン農業トレーダーであるアン・バーグ氏は「一部の政府が戦時中と同様の食料配給、価格統制、国家備蓄の積み増しなどの措置を取る可能性がある」と指摘する。

 各国で「自国第一主義」の対応が広がる中、ここ数十年で相互補完関係が強まっていた国際的な農業システムを混乱させるリスクがある。一部の農産物については、一握りの国が世界全体の供給量で高いシェアを持っているため、いったん輸出規制に踏み切れば大きな影響を及ぼしかねない。

 主要な小麦の輸入国であるアルジェリアとトルコは主食確保のため、小麦の国際入札の実施を発表したほか、モロッコは6月中旬まで小麦の輸入関税を凍結することを決めた。

 主要な食料生産国の輸出制限措置や消費者による買い占めが加速すれば、食料は高騰する可能性もある。食料価格危機といわれた2008年と11年には、アフリカ、アジア、中東など30カ国以上で暴動があった。ベントン氏は「食料の供給が不足すれば、社会は完全に崩壊する」と指摘する。

 世界の在庫は十分

 ただ、農業金融大手コバンクのリサーチ担当副社長、ダン・コワルスキ氏は「前回の食品価格危機時とは異なり、世界のトウモロコシ、小麦、大豆、コメなどの在庫は十分にあり、劇的な上昇はない」とみている。

 ただ、一部の食品価格は消費者による買いだめや、急激なドル高で消費国の輸入価格が上昇したことを背景に既に上昇している。シカゴの小麦先物は3月に入り6%超の上昇となり、米国の牛肉卸売価格は今週、15年以来の最高値を記録した。卵の価格も上昇している。

 国際連合食糧農業機関(FAO)のチーフエコノミストであるマキシモ・トレロ氏は「今は保護主義に向かうのではなく、協調すべきときだ」と訴えた。(ブルームバーグ Isis Almeida、Agnieszka Sousa)

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