論風

デジタル国富論と地方創生 国民福祉向上に効果絶大 (1/2ページ)

 野村総合研究所(NRI)は2017年から3年間にわたり「デジタル資本主義」という新たな経済システムについての研究成果を発表してきた。18年に成果の一端を『デジタル資本主義』(東洋経済新報社)にまとめたが、この3月に刊行した続編『デジタル国富論』(同)では、デジタル資本主義の進展が人々にどのような豊かさをもたらすかという視点から考察している。(野村総合研究所会長兼社長・此本臣吾)

 日本人の生活満足度には所得の多寡だけでなくデジタルの利活用度が大きく影響しているという結果が、NRIの「生活者1万人アンケート調査」の分析から得られている。SNSで社会とつながり、電子商取引(EC)で欲しいものをすぐに入手できるなど、生活のさまざまなシーンでデジタル技術の恩恵が生み出されている。デジタル化にはマイナスの側面もあるが、今はプラスの効果が大きく上回っている。

 生活満足度に直結

 日本以上の成熟社会である欧州でもこの傾向は同じだが、中でも、国民IDが広く普及し、ほとんどの行政手続きが電子化されているなどデジタル社会資本の厚みがある北欧で、生活者の満足度はとりわけ高い。

 デンマークなどでは個人のデータは国が管理する公共財となっており、さまざまなスタートアップ企業がそれらを活用した生活者目線のサービスを展開している。また、エストニアでは、国民個人のデータはデジタルIDでひもづいているので、個人が自分のポータルサイトで閲覧、情報管理ができるようになっている。データについては、事業者や行政ではなく、国民一人一人の主権が確立されている。

 NRIでは、人々がデジタル技術を活用して生活満足度を高め得る潜在力を表す「DCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)」という新たな指標を開発した。これを都道府県別に試算してみると、生活満足度との相関が、1人当たり県民所得よりも高い結果となった。つまり国レベルと同様に地方レベルでもデジタル社会資本を充実させることで、地方住民の生活満足度は高めることができる。

 一方で、地方レベルでのデジタル化にはさまざまな困難もある。まず採算性が低いので民間資本を導入しにくい。かといって地方財政にも限界があり、自主財源頼みのデジタル投資は難しい。また、地域の行政機関、医療機関、大学、民間事業者などがそれぞれに保有しているデータを相互に連携させるには、複雑な合意形成を図らなければならない。その上で、北欧のように個人が自由に自らのデータを閲覧できるようにする必要もある。

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