海外情勢

「平壌酒場」ソウルで人気 日本風居酒屋改装、ドラマで追い風

 韓国・ソウルに2019年10月、北朝鮮をコンセプトにした飲食店「平壌(ピョンヤン)酒場」がオープンした。以前同じ場所に日本風居酒屋があったが、日韓関係悪化のあおりで売り上げが落ち、経営者が思い切って改築した。南北の男女の恋を描いたドラマが誘客の追い風となり、人気店となっている。

 若者が集うソウルの繁華街、弘大(ホンデ)。平壌酒場には、北朝鮮各地で見られるようなスローガン入りの看板が掲げられている。書かれているのは「飲酒強国を築こう」「焼酎の大衆化を」といった冗談交じりの内容だ。

 経営者で40代の張右京さんは同じ場所で「うまい京都」という居酒屋を手掛けていた。日韓関係の悪化で不買運動が起き売り上げは半減。北朝鮮をコンセプトに建て替えることを決めた。「北朝鮮に関心があったわけではなく、誰もやったことのない店をやりたいと思った」という。ただ1950年に始まった朝鮮戦争は現在も休戦状態のままで、韓国には北朝鮮への利敵行為を取り締まる国家保安法が残る。店の工事段階から「北朝鮮を称賛している」と同法違反を指摘する声があり、警察関係者も訪れた。

 「この時代に、そんな視線を浴びるとは思いもしなかった」と張さん。外壁に掲げていた北朝鮮の故金日成(キム・イルソン)主席らの肖像画を外し、トランプ米大統領と韓国のコメディアンの写真に替えてオープンにこぎ着けた。

 北朝鮮のビールや焼酎を輸入できないため、自作した北朝鮮風のラベルを貼った酒類を提供。昨年12月からテレビ放映された韓国財閥令嬢と北朝鮮軍人のラブストーリー「愛の不時着」の視聴率が高まるにつれ、来客数も増えたという。

 北朝鮮を敵視する保守層から批判もあるが、恋人と来店した30代の韓国人男性は「通り掛かって気になったので入った。特に拒絶感はない」。ソウルで暮らすペルー人の女性は「北朝鮮にいるみたい」と興奮気味だった。(ソウル 共同)

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