専欄

中国が盛んに唱える「人類運命共同体論」 支援と世界経済の安定に寄与

 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 新型コロナウイルスの感染は、中国では終息が語られるようになっているが、欧米各国では先の見えない闘いが続いている。感染拡大を受け、中国の指導者やメディアは人類運命共同体論を盛んに唱えている。

 人類運命共同体の構築は、新型国際関係の構築と並んで、習近平外交の核心である。習近平は2017年秋の共産党大会の政治報告で、テロ、ネットセキュリティー、気候変動などとともに重大な感染症を人類共通の非伝統的安全保障上の脅威として取り上げ、人類運命共同体の構築を呼びかけている。

 新型コロナの感染が世界各国に拡大するにつれ、習近平は精力的に各国の指導者と電話会談を行っている。その際、習近平が強調しているのは、ウイルスには国境がないこと、全人類の共同の努力がなければ、ウイルスとの闘いには勝利できないことである。

 また、世界各国は運命共同体であり、中国は人類運命共同体の理念に基づき、情報、経験を共有し、感染拡大の制御に向けて協力することも強調している。国連および世界保健機関(WHO)が中心となって人類衛生健康共同体を構築することを支持するとも述べている。

 習近平は先月中旬に北京を訪れたパキスタンの大統領との会談では、中国とパキスタンの関係を人類運命共同体構築の模範にしたいとも語っている。両国は極めて密接な関係にあり、全天候型の戦略的協力パートナーシップを結んでいる。

 先月26日の主要20カ国・地域(G20)首脳テレビ会議でも、習近平は重大な感染症は「全人類の敵」であり、国際社会は協力して対応すべきで、中国は人類運命共同体の理念を堅持して、各国にできるだけの支援を行い、世界経済の安定に寄与すると述べている。

 中国は感染拡大の制御に向けて、世界各国を積極的に支援しており、支援対象は先月下旬の時点で約90カ国に及んでいる。中国はこの支援について、「責任大国」として当然の行為であり、人類運命共同体理念の実践であるとしている。

 支援にあたって中国は、感染拡大の制御に成果を挙げた「中国の経験」を共有したいとしているが、武漢封鎖に象徴される極めて強力な措置は、他国では必ずしもとることはできないだろう。新型コロナ後の世界において、中国が期待するように、人類運命共同体意識が強まるのだろうか。(敬称略)

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