海外情勢

特需の裏でゲーム業界に意外な逆風 コロナで新作開発が進まぬ理由

 新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛の動きが広がり、家庭用ゲーム市場に特需が訪れる中、ゲーム業界に思いもかけない逆風が吹いている。大規模見本市の中止や在宅勤務への移行で重要な商機が失われ、多くの新作タイトル開発が宙に浮いているのだ。業界の発展を支える基盤が揺らいでいる。

 見本市の体験不可能

 世界規模で外出を控える動きが増える中、米ゲーム開発会社バルブが運営するインターネットゲームサービス「スチーム」はユーザー数が初の2000万人を突破。巣ごもり消費による需要増が期待され、任天堂など一部ゲームメーカーの株価も上昇している。

 しかし、ブームの恩恵を一身に受けているかにみえるゲーム業界にも、新型コロナの影が忍び寄っている。世界的な感染拡大を受け、ゲーム業界では「ゲーム開発者会議(GDC)」や「E3」といった大規模な国際的な見本市が軒並み中止や延期に追い込まれている。

 これらの見本市は新作タイトルの発表を行う場として重要だが、それだけではない。企画、宣伝、販売などを担うパブリッシャーと開発者をつなぐ基盤の役割もあるため、見本市がなくなると、新作ゲーム開発に影響を与え、大きな打撃となる。

 見本市のキャンセルで特に大きな被害を受けているのが、個人や小規模会社が開発する「インディーゲーム」と呼ばれるゲームの開発者だ。インディーゲーム開発者にとって見本市は、新作を披露し、知名度を広げるための最大の舞台だからだ。

 ポルトガルのインディーゲームスタジオ「アップフォール・スタジオ」を運営するデビッド・アマドル氏は「ネットを介し技術や通信手段は自由に利用できるが、対面での話し合いに勝るものはない。事業環境が厳しさを増す中、ざっくばらんに参加者と会話したり、体験版をプレーしてもらったりする機会があることは非常に助けになる」と話す。

 同氏は約2年前、欧州の国際ゲーム見本市「ゲームズコム」での“偶然の出会い”を通じ、任天堂主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」向けにソフトを開発する契約にこぎ着けた。しかし、現在はGDCの延期で新作タイトルのデモを披露する機会を失い、ネットでの遠隔営業にも苦戦する中で一部プロジェクトが宙に浮いているという。

 関係者によると、中国の大手モバイルゲーム・パブリッシャーはE3とGDCに代わる一連の会議の準備を進めている。特に日本のスタジオが対面での交渉による契約締結を希望する傾向が強く、感染封じ込め措置が緩和されるまで多くのプロジェクトが保留になっている。

 中国で素材調達滞る

 サプライチェーン(供給網)にも混乱が生じている。現在、大手パブリッシャーの多くがゲーム素材の制作を中国の外注に頼っているが、新型コロナの影響で外注先の社員が出勤できなくなり素材の調達が停滞している。

 こうした中、任天堂は対戦型アクションゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」の追加コンテンツ公開延期を発表したほか、米国のパブリッシャーであるプライベートディビジョンも人気ロールプレーイングゲーム(RPG)「アウター・ワールド」のニンテンドースイッチ版の発売延期を決めた。

 調査会社ゴープレーリサーチのアナリスト、ビリー・ピジョン氏によると、ソニーと米マイクロソフトが次世代ゲーム機の発表を年末に控える中、既に対応ソフトの開発に追われていたスタジオも打撃を受けている。米エレクトロニック・アーツ、仏ユービーアイソフトなどのゲーム開発・販売会社は、各タイトルを損益ベースで追跡しつつ期日までに完成できるかを調査しており、収益性が見込めないタイトルは開発を中止せざるを得なくなる見通しだ。(ブルームバーグ Takashi Mochizuki、Zheping Huang)

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