海外情勢

国債大増発の時代到来 各国の緊急経済対策はMMT頼み

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、日本や欧米各国が大規模な対策を相次いで打ち出している。感染拡大の終息や将来の財政健全化への道筋が見通せない中で、各国が対策の財源を捻出するため巨額の国債を増発するよりどころとなりそうなのが、財政赤字の拡大を正当化する「現代貨幣理論(MMT)」だ。新型コロナの混乱が収束後も世界で国債の大量発行が常態化するとの見方が出ている。

 コロナと闘う資金

 クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は6日、経済専門局のCNBCに対し、新型コロナに対応した巨額の経済対策の財源として「戦時国債」を発行することをトランプ大統領に進言する考えを明らかにした。

 クドロー氏は「この戦争を戦い、パンデミック(世界的大流行)と闘う資金を調達するため、債券を発行すべきときだと思われる。私は全面的に支持する」と述べた。

 各国政府はパンデミックによる世界経済の失速を回避するため、過去に例をみない規模の刺激策を相次ぎ打ち出している。安倍晋三政権は7日、過去最大規模の経済対策を閣議決定。米国は過去最大規模となる2兆ドル(約220兆円)の景気刺激策に続き第4弾の策定を急いでいる。欧州連合(EU)は財政出動拡大を容認するため加盟国政府の借り入れ上限を停止した。

 国債発行は、今やこれらの大規模な対策を支える「命綱」だ。世界の債務残高は長引く低金利環境下で既に過去最高水準に達しているが、今後さらに膨らむ見通しだ。

 財政出動に前のめりの姿勢は2008年の金融危機時と同様だ。英ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン氏は「可能な限り大規模な刺激策を実施すべきだという政治的圧力には際限がない」と分析する。

 ただ、財政赤字を拡大し続ければ、経済に深刻な副作用を与えかねず、現在の新型コロナの混乱が収束した後には、財政健全化路線への復帰を求める圧力が高まる可能性がある。

 米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は「前回の金融危機時にも『迅速かつ大型の刺激策が必要』との考えでエコノミストが一致したが、この政策が継続するかどうかは不透明だ。数カ月以内に新型コロナの混乱が収束すれば、われわれは支出を止めたいと考えるだろう」と指摘する。実際にドイツは3月、新型コロナの危機が過ぎ去れば、財政緊縮路線を復活させる方針を示した。

 中銀が直接引き受け

 だが、財政収支の均衡に消極的な国がないとはいいきれない。INGグループのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は米国を例に挙げ「トランプ氏が11月の大統領選で再選された場合、財政再建に向け緊縮政策をとることは考えにくい」と指摘する。こうした場合、財政・金融政策の境界線が不鮮明になる可能性が大きい。ナイトリー氏は「国債の一部を帳消しにするため、各国の中央銀行が何らかの措置を迫られる可能性がある。こうした強硬措置への要求は今後高まる」と予測する。

 現在、日本を含む多くの国では中銀が国債を直接引き受けることは原則禁止とされているが、MMTはこれを容認している。多くの経済学者は「財政赤字に歯止めがかからなくなる」などとしてMMTを否定してきたが、「財政支出拡大が待ったなしの現状で、こうした潮流は変わりつある」(ジェン氏)。

 ジェン氏は「巨額の財政赤字を中銀がすべて引き受けることが“新常態”になる可能性が高い。故意であるかどうかを問わず、われわれはみなMMTにシフトしている」と話した。(ブルームバーグ Ben Holland、Enda Curran)

【用語解説】現代貨幣理論(MMT)

 自国通貨を持つ政府は財政破綻することはなく、過度なインフレにならない限り、政府が増発した国債を中央銀行が購入し財政を支えればよいとする経済学説。革新的な米経済学者らが提唱している。

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