国内

緊急事態宣言、京都が対象除外の波紋 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が発令した緊急事態宣言。東京、大阪、兵庫など7都府県を対象としたが、京都府や愛知県が対象に加えるように政府に求める事態となっている。特に大阪、兵庫と京都は経済、文化で密接な関係にあり、日常的に人の往来も多く「地域性で考えるべきでは」との指摘もある。緊急事態宣言は対象の都道府県を追加することもできるが、感染状況は刻一刻と変化しており、政府は難しい判断を迫られている。(鈴木俊輔)

 「宣言が出された7都府県と比べても厳しい状況にある」。10日、京都府の西脇隆俊知事は会見でこう話し、政府に緊急事態宣言の対象に京都府を加えるように要請した。

 京都府の感染者数は、14日現在で210人。全国的にも高い水準で推移しており、感染経路が不明な感染者も増加している。府と京都市は外出自粛を求めるなどしてきたが、緊急事態宣言の対象に加わることが必要だと判断した。

 3都市、密接な関係

 「京阪神」という言葉もあるように、京都、大阪、神戸の3都市を中心に、3府県は経済や市民生活で密接な関わりを持っている。JRのほか、私鉄が各都市を結び、各都市間の所要時間は20~30分程度と、通勤や通学で往来する人も多い。

 平成27年の国勢調査では、他府県から大阪府に約59万人、大阪府から他府県には約22万人がそれぞれ通勤。多くは隣接する兵庫県や京都府、奈良県などとみられる。

 近畿地方の人の流れや経済に詳しい大阪商業大の石川雄一教授(都市地理学)は「近畿は大阪一極集中ではなく、京都、大阪、神戸の3都市を中心に、人が激しく往来している。通勤だけでなく、買い物や食事でも府県境を越えることは日常的で、いわば一つの地域といえる」と説明する。

 一方、宣言の対象となった7都府県の中でも市町村ごとに感染状況には濃淡があり、感染者がほとんどいないエリアもある。石川氏は「同じ都府県内でも都市部との人の移動があまりない地域もあり、生活や経済の実態は都道府県という枠組みでくくれるものではない」と話す。

 難しい線引き

 大阪では緊急事態宣言に伴う飲食店などへの休業要請が出され、市民生活は一変。バーやカラオケは休業の対象とされ、居酒屋などの飲食店も営業は午後8時までとなった。

 兵庫も「府県境をまたいで利用されるケースが出てくる。大阪とそろえて地域全体の要請とした方が望ましいと考えた」(井戸敏三知事)として、同様の内容で要請を出した。

 緊急事態宣言は対象の都道府県や期間を変更することもできるが、政府は京都府や愛知県について、現時点で対象に追加しない方針を示している。日本大危機管理学部の福田充教授は「対象地域を広げていけば際限がなくなるのも事実。線引きは難しい」と指摘する。

 政府は夜の繁華街への外出自粛要請を全国に広げるなど、緊急事態宣言の対象外も含めた対応を求めており、福田氏は「宣言の対象に含まれているかどうかではなく、国全体の危機だという意識を持って行動するべきだ」と話している。

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