海外情勢

海洋資源 コロナ禍で回復へ 需要減や感染リスク回避

 第一次、第二次世界大戦時には、商業漁業が行われなくなったことで魚類の個体数が増加したが、新型コロナウイルスの感染拡大により、同様の変化が起きようとしている。海洋学者は漁の停止による海洋生物への影響に注目している。

 目標前倒し達成期待

 世界中で漁業が行われなくなっているのは、新型コロナの感染拡大で海産物の大口需要家である飲食店やホテルなどが営業を停止していることに加え、操業中の漁船内で乗組員がソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つことが難しく、出漁による感染リスクが高いためだ。世界最大の海産物市場であるアジアでは需要の減少とともに価格も急落。欧州連合(EU)は3月、海産物需要の激減を受け、加盟国による漁業、養殖業への金融支援を可能にする緊急措置を発動した。

 こうした中で、サウジアラビアの紅海リサーチセンターのカルロス・ドゥアールテ氏は海洋資源保護の目標が当初の予測よりも早く達成できるのではないかと期待している。6~7月まで漁業が行われなくなり、この結果、魚類の個体数の回復が加速するとみている。

 2つの世界大戦後に行った調査では海洋資源の顕著な回復が見られた。海の環境を改善するには個体数への負担を減らすより他に方法はないという。

 英国やカナダ、スペイン、サウジの科学者と共同で調査を行っている同氏は「海洋生物の生育状況が改善しているかについてはまだ実質的な調査結果が得られていないが、海上での人間の活動が少なくなったことで、シャチやイルカ、アザラシなどの哺乳類が、この数十年間姿を見せなかった場所で確認されたり、ブラジルの海岸でウミガメの産卵が報告されたりしている。今後1~2年でロックダウン(都市封鎖)の影響が現れるだろう」とみている。

 「魚類に最大の影響」

 オーストラリアのジェームズクック大学のジョシュア・シナー教授率いる研究では、状態が良くないサンゴ礁を回復させるには海洋環境の保護と漁業の制限が重要であることが明らかになっている。サンゴ礁の状態を魚集団、多様性、生態系の状態で分類したところ、最も良い状態のAランクに分類されたのは全体のわずか5%。この全てが人間の影響をほとんど受けない遠隔地に生息していたという。

 また、英ランカスター大学の教授で41カ国1800を超える熱帯サンゴ礁に暮らす魚集団についての共同研究論文の執筆者の一人、ニック・グラハム氏は「保護を行ったエリアの観察により、魚類の個体数と多様性が完全に回復するには20年という長い時間がかかる。魚類にとって直接の影響が最も大きいのは漁業だ。増加する人口の需要に応えるために漁を増やせばサンゴ礁に住む魚集団への負担が増大する。漁を減らせば生き残る魚が増える」と話した。(ブルームバーグ Laura Millan Lombrana)

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