海外情勢

米株式市場の過剰期待戒め ワクチン“9月準備”に専門家ら異議

 米株式市場では新型コロナウイルス感染拡大を防ぐワクチンの早期開発への期待が膨らんでいるが、専門家らの間には慎重な見方が根強く、過剰な期待を戒める声が出ている。

 「通常は数年必要」

 英オックスフォード大学の科学者は4月、ワクチンを今年9月までに準備できる可能性があると英紙タイムズに踏み込んだ発言をした。これは1年以上かかる公算が大きいと示唆する米機関の見通しよりもかなり早い。

 SVBリーリンクのアナリスト、ジェフリー・ポージェス氏は調査リポートで「このようなコメントはワクチンがこれくらいの時間枠でできて当然と思わせてしまう。こうした結論は政策当局や投資家、開発者の判断や見通しをゆがめる」と指摘する。

 強い期待感は米モデルナ、ノババックスやイノビオ・ファーマシューティカルズなどワクチン開発企業の株価を押し上げている。だが、新型コロナ拡大の前でさえ、いずれの企業も製品を市場に出すことに成功したことはなかった。

 こうした強い期待感を落ち着かせようとしているのはポージェス氏だけではない。スイスの製薬大手ロシュのシュバン最高経営責任者(CEO)も4月下旬、ブルームバーグ・テレビに「ワクチン開発には通常は数年を要するため、1年から1年半というスケジュールは非常に野心的のように見える」と語った。

 ハーバード大学医学大学院のマーク・ポズナンスキー准教授は、モデルナが最速で開発すると投資家が想定している可能性があるが、同社のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン候補が安全かつ有効かどうかは少なくともさらに1年は分からないと話す。

 SVBリーリンクのポージェス氏が指摘する問題点は、疫学者やエコノミストらが半年程度でワクチン開発が進むと見込んでいるとみられるが、広く使われるワクチンは同氏の「最も楽観的な」見通しでも2~3年かかる可能性が大きいことだ。

 モデルナやジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のアデノウイルスベースの一部ワクチン候補は比較的速い開発が有力視されているが、ペースが速い分、安全性や有効性が犠牲になる可能性があるとポージェス氏は語る。

 たとえ有効なワクチンが承認され、1年後に使用可能になったとしても、新型コロナの感染リスクが高い患者や医療従事者などが優先される公算がより大きく、「同感染症の拡大を防ぐ十分な『集団免疫』を獲得するには数年かかるだろう」とポージェス氏は話す。

 完全な理解至らず

 ワクチン研究者らはこうした欠点も承知している。ポズナンスキー准教授は「新型コロナウイルスに対する免疫反応の構成要素は何か、あるいはそれを達成するためにワクチンが厳密に何をする必要があるのか、われわれはまだ完全には理解していない」と明かす。

 科学者が新型コロナに関してまだ解明できていない部分はあるものの、70余りのワクチンが開発段階にあり、ポズナンスキー氏は早期の実用化に期待を寄せている。

 ポージェス氏も悲観一色というわけではない。「ソーシャルディスタンス(社会的距離)の維持や抗ウイルス薬の登場、ウイルス検査能力の拡大、免疫測定の開発、新型コロナ感染症の病態生理学・免疫学上のさらなる理解でパンデミック(世界的大流行)をめぐる先行き見通しは改善している」と述べた。(ブルームバーグ Cristin Flanagan)

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