海外情勢

ベトナム、酒類消費減り業界悲鳴 飲酒運転規制にコロナ追い打ち

 アジア有数のビール消費国となったベトナムが今年から飲酒運転の取り締まりを強化し、酒類の消費が減り関連業界が悲鳴を上げている。書き入れ時のはずだった1月の旧正月の販売も低調。新型コロナウイルスに絡んだ経済停滞が追い打ちを掛けている。

 ベトナムは公共交通機関がまだまだ未発達。昨年まではバイクに関しては一定量の飲酒をした後も運転が認められていたが、元日からの新ルールでは飲酒後の車両運転が全面禁止になった。

 自動車の場合、罰金の最高額は2倍以上の4000万ドン(約18万円)に引き上げられ、免許停止は最長2年。庶民の足であるバイクでも罰金最高800万ドン、最長2年の免停が科される。

 一方、ベトナムのビール消費は経済成長に連れ拡大し、2004年から18年にかけて約3倍になったとの調査もある。キリンホールディングスがまとめた資料によると、18年のビール消費量は前年比7.1%増の466.7万キロリットルで9位。アジアでは中国、日本に続き3位だった。

 交通取り締まり強化直後の1~2月、酒類業界ではビール販売量が前年比4割減になった企業も。レストランやケータリングサービスの顧客が大幅に落ち込んだようだ。「みな歩いて行ける店にしか行かなくなった。商売あがったりだ」。ハノイでレストランを経営する男性はこぼした。

 また、伝統的に中国への警戒感が強いベトナムは新型コロナ対応も早かった。会食を避ける雰囲気が追い打ちを掛け、1~4月のビール生産量は前年の7割まで落ち込んだ。「ビアサイゴン」「333(バーバーバー)」で知られるビール製造大手サベコらがつくる業界団体は、税の減免や罰則の緩和などを政府に求め始めた。

 ただ、飲酒運転の厳罰化は悲惨な交通事故の多発を受けてようやく実現した。「客は減ったが、今回の措置は理にかなったものだと思う。女性たちは夫がまっすぐ帰宅するようになり、ほっとしている」。ハノイの女性飲食店主、グエン・ティ・ハンさんは地元メディアにこう話した。酒類業界の苦闘は続きそうだ。(ハノイ 共同)

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