海外情勢

台湾、貿易戦争巻き添え 半導体受託生産のTSMC打撃

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をめぐり非難合戦を繰り広げる米国と中国の間で貿易摩擦が再燃し、半導体ファウンドリー(受託生産)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)がその巻き添えになっている。米商務省は15日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する輸出禁止措置の強化を発表。中国側は対抗措置も辞さない構えを示唆している。

 揺らぐ「皆の供給元」

 米商務省は今回、米国の機器を使った半導体の製造メーカーに対し、米政府の認可なしに華為に対して供給することを禁じた。TSMCや競合他社は同省から認可を得ない限り、華為への供給を停止しなければならない。

 米国はすでに昨年、華為をブラックリストに相当する「エンティティー・リスト」に掲載しており、今回の措置は規制強化にあたる。スマートフォンや通信機器の生産に必要な最先端の半導体の分野で、米国あるいは海外の半導体メーカーが華為とその傘下で半導体の設計を担う海思半導体(ハイシリコン)と提携するのを阻止する。

 この措置は、米国の輸出制限を骨抜きにしようとする華為の取り組みをくじき、米国の技術が米国の国家安全保障および外交政策の利益に反する悪意ある活動に利用されることを防ぐ目的だと、ロス商務相が声明で説明した。

 TSMCにとって、緊張が高まる米中両国の間で中立を保つのは一段と困難になっている。同社は「皆のファウンドリー」ブランドで事実上ハイテク業界のスイスとして、アプライド・マテリアルズやラムリサーチといった米半導体製造装置メーカーを頼りつつ、華為など中国企業や米軍へ製品を供給してきた。

 中国の報復招く恐れ

 売り上げのおよそ14%を華為から得ているTSMCにとって、今回の規制強化は業績への打撃となる。もっと重要なのは、前々から「一つの中国」政策を唱え、台湾を本土に属する省とみなす中国政府の報復を招く恐れがあることだ。

 TSMCは15日、米アリゾナ州で2021~29年に総額約120億ドル(約1兆2850億円)を投じて先端半導体工場の建設・運営を計画していると発表。米国の連邦・州政府から支援を受け、21年着工、24年の生産開始を目指すという。

 新工場建設でTSMCは米国に一歩歩み寄った格好だ。日本経済新聞は18日、TSMCが華為からの新規受注を停止したと報じた。

 こうした動きは、世界の消費者と企業向けにテクノロジー製品を生み出す複雑な構造全体に大損害をもたらす恐れがある。華為への攻撃はスマホ・通信機器生産の世界的リーダーである同社の地位と従業員のみならず、数百にも上るサプライヤー企業をも脅かす。中国政府は国を代表する企業となった華為を守ると表明しており、アップルやボーイングといった対中依存度の高い米企業が報復の標的となる可能性がある。

 サンフォード・C・バーンスタインのマーク・リ氏率いるアナリストらは15日の調査リポートで、「中国が報復する公算は大きく、投資家は貿易戦争が深刻化する可能性に備えて心の準備をすべきだ」と警鐘を鳴らす。

 TSMCは回路線幅5ナノ(ナノは10億分の1)メートルと、人間のDNAの約2倍まで狭めた製品を生産できる。中国トップのファンドリー、中芯国際集成電路製造(SMIC)が生産するのは14ナノメートルだ。微細化により、TSMC製品は、はるかに高性能でエネルギー効率に優れたものとなっている。(ブルームバーグ Debby Wu、Ian King)

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