専欄

中国もネット世論は抑え込めない 当局の対応にも戸惑いと混乱

 新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)していく中で、厳しい情報コントロール下にある中国国民もさすがに黙ってはおれず、ネット上ではたびたび炎上する場面が発生している。当局は都合の悪い情報がネット上に現れると、削除しようとするが、削除されると余計に反発が大きくなる。やむなく削除した記事を復活させるなど、当局の対応にも戸惑いと混乱が生まれている。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 1月下旬に武漢在住の女性作家が「方方日記」を連載し、武漢で実際に何が起きているかを子細に描写し始めた。すると、全国の圧倒的に多くのユーザーから、すばらしいと賛同の嵐が巻き起こった。いやがらせや批判の声もあったが、なんとか60回を書き終えることができた。

 2月上旬に新型コロナの発生をいち早く伝えた医師の李文亮さんが、自身も感染して死去した。ネット上では、李さんの告発が葬り去られたことや地方政府の対応のまずさなどへの不満が殺到し、炎上した。当初、これらの投稿記事は削除されたが、それによって余計に怒りを増幅させてしまい、結局当局も削除するのをあきらめたほどだった。

 3月に入って武漢市党委書記が記者会見で、蔓延拡大の抑制に一定のめどがついたとして、「武漢人民は総書記と党に『感恩(人の恩に感謝すること)』すべきだ」と発言すると、ネットは再び炎上した。武漢の多くの人々がなお苦しんでいる中で、「感恩」せよとはあまりに無神経という怒りの声である。

 これまでの中国では考えられなかった世論の高まりが、新型コロナの流行を機に、起きている。学者の中からは、単に地方政府における情報隠蔽(いんぺい)の体質だけではなく、中国共産党の情報統制システムそのものにも問題があるのではないか、との主張も出始めている。

 習近平政権は就任以来、一貫して党・政府に批判的なメディアや知識人らに対し、言論統制を強化してきた。ところがそうした統制への批判を意識してか、2016年春に「ネット上の善意による批判的意見は、党・政府向けか個別の幹部向けかを問わず、また穏やかか耳に痛いかを問わず、歓迎するだけでなく、真剣に研究しくみ取る必要がある」と語ったことがある。

 その後は再び、統制強化へと戻ってしまったが、今回の新型コロナは、もはやネット世論を力で抑え込むことができないという新たな状況を生み出した。4年前の発言を今一度、思い出してもらいたい。

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