高論卓説

兵庫・豊岡に“演劇観光大学”開学へ 地域創生に必要な「文化力」育成 (1/2ページ)

 兵庫県豊岡市で2021年の開学を目指しているユニークな大学がある。演劇と観光が学べる国内初の大学として観光と芸術文化を結び付けることにより、地域を元気にできるプロフェッショナルの育成を目指すという「国際観光芸術専門職大学(仮称)」である。国際的に活躍する劇作家の平田オリザ氏が学長候補だ。観光と芸術という名称が入った日本初の公立大学として、世界につながる新たな価値を創造できる人材を地方から育成することが開学の目的だ。(吉田就彦)

 現在のコロナ禍で、大変な状況になっている日本のインバウンド観光であるが、それと同様に疲弊が年々ひどくなっている日本の地方にとって、この大学のコンセプトである観光と地方発は大きく注目される。

 以前の本コラムで、神奈川県横須賀市の浄楽寺にある国の重要文化財である運慶作の仏像のことを書いた。地域の宝である運慶仏を観光戦略の中心に据えて地域を活性化することがこの国の活性手段であるとの提案だ。

 兵庫県の新大学では、芸術文化を使って地域を起こしていく方法を主眼にしているようにみえるが、浄楽寺のケースのように歴史が培ってきた文化も同じ文化という立脚点で地域を活性しようと志向していることには変わりがない。しかもそのメインの戦略はともに観光事業である。

 日本の観光戦略を考えるとき、文化財だけではなく、現代芸術や食、サブカルチャーも含めて全ての文化は、日本を魅力的に見せ、不思議で面白い国と感じさせ、世界に好きになってもらえる効果を生む。それは大いに地方の活性につながる。なぜなら日本の地方は最も日本らしい文化の宝庫だからだ。

 もちろん、地方への企業誘致も重要だが、企業が国際化の流れと技術革新のグローバル化により国際競争力を失いつつある現状がある。田畑を潰して相次いで用意された工業団地や企業団地が現状どうなっているかといえば、来てくれる企業や工場は少なく、その補填(ほてん)に頭を抱えている自治体も少なくない。そのことは日本が世界の中で今後どうやって生き残っていくのかという戦略を、現状を見つめ直して再構築することが求められていることを示唆する。

 その有力な一つの戦略が文化を使った観光戦略なのである。それを進めていくためには、大きく3つの問題がある。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus