論風

新型コロナの教訓 医療安全保障の確立を (1/2ページ)

 新型コロナウイルスは世界180カ国以上に広がり、感染者や死者は大変な数に上っている。各国首脳は「戦争」と受けとめ、戒厳令に近い国境閉鎖、都市封鎖、外出禁止、店や工場の営業停止などの措置を講じている。イタリア、スペインに続き、米国でも患者が溢れ、医療崩壊を起こしている。日本でも戦後初めての緊急事態宣言が出された。まさにウイルス軍と人類軍の戦いで、SF映画のような「第三次世界大戦」の様相を示している。(知財評論家(元特許庁長官)・荒井寿光)

 感染症との戦いの歴史

 人類は古代から感染症と戦ってきた。14世紀に欧州で猛威を振るった黒死病では、世界で約8500万人が死亡したと推定されている。

 コレラはこれまで7回も世界的に流行している。1918年からのスペイン風邪では感染者は約6億人、死者は約5000万人に及び、日本でも約39万人が死亡したといわれる。21世紀に入ってからも短期間の間に、新型インフルエンザ急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)に続き、新型コロナが発生し世界中を恐怖に陥れている。

 感染症は手ごわい。非常に多くの死者をもたらし、病原菌を見つけワクチンと治療薬を開発しても、次々と新しい感染症が生まれる。新しい感染症は予防薬も治療薬もない。人類の感染症との戦いは今後も続く。従来の仕組みを大きく越える備えが必要だ。

 国民の生命と健康を守るのが、国家の最大の役割だ。イタリアやスペインを見ると感染症により国の安全が脅かされている。

 新型コロナは昨年12月に中国で発生したが、中国はそれを隠し国際ルールである世界保健機関(WHO)への通報が遅れ、しかもパンデミック(世界的大流行)の恐れがあることをWHOが発表しないように圧力を掛けたと言われている。そのため、中国人旅行者が世界に拡散させ、各国とも対策を取るのが遅れた。

 日本はマスクの供給の約8割を中国に依存していたが、中国がマスクを国家応急備蓄物資に指定し輸出を禁止したため、日本国内でマスク不足が起きた。中国は国内で新型コロナを制圧する見込みができると、イタリアをはじめ120カ国以上にマスクや人工呼吸器を提供する「マスク外交」を進めて、国際政治面での影響力を高めようとしている。

 今や医療物資は石油やハイテク製品と同じく国際政治の戦略物資になり、軍事や経済の安全保障と同様に、医療安全保障が国家の存続・繁栄に直結するようになった。日本人の生命と健康は日本が自分で守らなければならない。医療分野を善意で成り立っている公衆衛生問題として考えるだけでなく、国益のかかった安全保障分野として対策を急がなければならない。

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