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両陛下、進講時にお言葉「最大限のお気持ち発信」 ビデオメッセージは慎重姿勢

 新型コロナウイルスをめぐり、天皇、皇后両陛下は4月以降、専門家から説明を聞く進講や面会に臨まれている。5回目となる3日は全国保健所長会の清古愛弓(せいこあゆみ)副会長ら保健所関係者3人と面会し、コロナ対応にあたる現場の状況などについて懇談された。宮内庁は、こうした進講などの場でのご発言内容を公表。同庁関係者は、公表が天皇陛下のご意向も踏まえたものと明かし「その時々にでき得る、最大限のお気持ちの発信の形」と説明する。

 3日に面会した清古副会長らによると、懇談は1時間ほどで、両陛下は職員の心のケアや、勤務体制などについてご質問。「ありがとうございます」「今後もお体を大事にしながら頑張ってください」などと感謝とねぎらいの言葉を述べられたという。清古副会長は面会後、「保健所のことはなかなか知られていないと思うが、現状をよく理解し、関心を持って聞いていただいた」と話した。

 両陛下のお言葉は、現場対応にあたる各分野の関係者へのおねぎらいが主となっている。コロナ禍では、陛下が広く国民に直接、語りかけられる「ビデオメッセージ」を期待する声も聞かれた。関係者によると、宮内庁内部で今後の皇室の活動の在り方を検討する中、陛下の5月のご即位1年のタイミングで、一般国民に対するお言葉を出されてはという意見も一部にあった。だが、皇室と宮内庁の姿勢は慎重だ。

 象徴天皇は憲法で「国政に関する権能を有しない」と定められる。「発生直後から一丸となって復興に向かうしかなかった東日本大震災と比べ、状況が刻々と変わる。政府や知事が各種の対策を講じ、国民への呼び掛けを続けており、折に触れた以上のお言葉には慎重にならざるを得ない」。宮内庁幹部はそう話す。別の関係者は「陛下のビデオメッセージは、いわば伝家の宝刀。それだけ重みがある」とした上で「経済支援や教育機会など、現在の国民の関心や要請に応えようとすると、どうしても政治的になる。それは避ける必要性がある」と指摘する。

 宮内庁は今後も両陛下への進講の場を調整しており、新型コロナウイルスに関する両陛下の思いは当面、進講のご発言を公にする形が取られる見通しだ。

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