海外情勢

米、コロナ禍で企業に「恒久的ダメージ」予想 雇用喪失3割長期化も

 新型コロナウイルスの影響で失業した米国民は今後、政府や金融当局の対策で労働市場が回復し再雇用されるという希望的観測がある一方で、新型コロナが米経済に労働のリアロケーション(再配分)ショックを及ぼし、企業や業界が恒久的なダメージを受けるリスクも指摘されている。この場合、失われた雇用は戻らず、失業率は高止まりする見通しだ。

 サービス・小売り打撃

 ブルームバーグ・エコノミクスの新たな調査分析は今年2~5月に米国で失われた雇用の原因について、5割がロックダウン(都市封鎖)と需要軟化の組み合わせ、3割が再配分ショックによるもので、2割は高額の失業手当が労働者の自宅待機を促したと推定している。米労働市場は当初は急速に回復するが、その後は横ばいとなり、多くの人が失業したままになると予想する。

 分析は最もリスクの高い業界にサービスや小売り、レジャー、教育、医療を挙げる。新型コロナの感染拡大は多くの場合、アマゾン・コムなどのネット通販と対照的に実店舗の経営を一段と圧迫し、ネット通販が勢い付いたコロナ前のトレンドを加速させそうだ。

 他の複数の研究も同様の警告を発している。シカゴ大学ベッカー・フリードマン研究所が5月に発表した調査分析は、米国内で最近実施された一時解雇の42%が恒久化すると予想した。

 同研究の執筆者の1人で、スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授(経済学)は「大規模な再配分ショックがある。景気後退の影響はセクターによってさまざまだ。得をするところもあれば損をするところもある」と指摘する。

 失われるスキル

 こうした現象は、生き残り可能な企業が存続し、労働者を別の仕事に進むのを支援する半面、もはや持続不可能で、財源を枯渇させるだけの企業を後押しできないような政策を策定するよう、各国・地域の政府に圧力をかけている。

 米ピーターソン国際経済研究所は先週発表した研究で、新型コロナ特有のショックとは政府が通常のリセッション(景気後退)時以上に企業を守り、労働者を保護する必要性を意味していると論じた。同研究所は生産再開の動機を生む賃金助成や新規融資に対する信用保証の継続を提言している。

 雇用の喪失にはさまざまな理由があり、異なる政策対応を必要とし、時には相反する場合もある。ただ大いに懸念されているのは、一時的な雇用喪失が恒久化し、スキルが失われ、さらに高い失業率が定着してしまう事態に陥ることだ。経済学者らが「ヒステリシス」と呼ぶ、スキルの劣化などで失業率が長期化する現象だ。

 こうした状況下で、労働問題の専門家らはセーフティーネットを改善する措置を止めてはならないが、人々が適正なスキルを身に着けられるようにしなければならないと主張する。経済協力開発機構(OECD)は先週、解雇された人々に対する職業訓練への公共投資を提唱した。

 それは労働者を技術革新の次の局面とそれに伴う激変に備えさせる一環となる。製造業から小売業にいたる企業がポストコロナ禍の世界に適応し、より多くの人々が保証された仕事を断たれる中、そうしたプロセスはこれから加速する可能性があるからだ。(ブルームバーグ Olivia Rockeman、Jill Ward)

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