インタビュー

東京財団政策研究所 「予算使い切る文化」見直す契機に

 東京財団政策研究所 研究主幹・森信茂樹さんに聞く

 --新型コロナウイルス感染症に対応する今年度第2次補正予算をどうみるか

 「緊急事態のため平時のように議論を尽くせないのは仕方ないが、総額ありきの予算だ。膨大な無駄が生じる恐れがある。かつて塩川正十郎元財務相は予算の無駄を省くべく財務省主計局で事業の執行調査を行った。今回も執行過程を監視して、霞が関における付けた予算は使い切るという文化を見直す契機とすべきだ」

 --過去にない財政支出となっている

 「相応の対策だが、財政に大きなインパクトを残すことは間違いない。東日本大震災のときのように一般会計と切り分けて別枠で管理し、財政規律を守るべきだ。経済対策の財源にはコロナ国債の発行を充て、所得税などに一定の税率を付加することで償還財源としていくのも手だ」

 --ドイツでは消費税減税を決めたが、日本は

 「期間は半年だけで、規模としては大きくない、表面的な減税だ。日本の場合は消費税は社会保障の財源となっており削ることはできない。その上、引き下げに伴う作業も膨大であり、現実的でない」

 --コロナ後の世界をより良い社会にするために税ができることはあるか

 「まずは環境税の導入。気候変動など地球環境について真剣に考えるべきときが来ている。次に格差是正。所得や資産の格差が感染率や死亡率を左右することが分かった。金融所得課税の強化も議論されるだろう。もう一つは国際的なデジタル課税。コロナ禍の中でも米IT大手4社GAFAの業績は堅調だ。今後はより寡占化が進むとみられ、超過利潤も生じる。これらの税制の議論は、結果として税収増につながり、コロナ対策の感染症対策の財源にもなる」

【プロフィル】森信茂樹

 もりのぶ・しげき 1973年京大卒、大蔵省(現財務省)入省。主税局総務課長などを経て18年から東京財団政策研究所研究主幹。中央大学法科大学院特任教授など兼職。専門は租税法。広島県出身。

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