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政府、駐留米軍負担要求を否定 米国の出方見極め

 ボルトン前米大統領補佐官は米中、米朝関係のほか、日米同盟の根幹である日米安全保障条約に対するトランプ政権の厳しい認識についても、著書で赤裸々に明かしている。ボルトン氏の指摘通り、米政府が今後、在日米軍駐留経費の日本側負担について大幅な増額を求めてくる可能性もある。日本政府は11月の大統領選の行方もにらみながら、米側の出方を慎重に見極める方針だ。

 「日米同盟は今やかつてないほど強固で幅広く、不可欠なものとなっている」。茂木敏充外相は23日の記者会見で、発効から60年の節目を迎えた安保条約の意義を強調した。しかし、タイミングを合わせたかのように発売されたボルトン氏の著書では、トランプ大統領が2018年6月の日米首脳会談で「(条約は)不公平だ」と不満を漏らしたと明らかにしている。

 ボルトン氏は、谷内正太郎国家安全保障局長(当時)に、トランプ氏が日本側の駐留経費負担として現行の約4・3倍に相当する年間約80億ドル(約8550億円)を求めていると伝えたと記した。事実とすれば、同盟を足元から揺るがしかねない。河野太郎防衛相は23日の記者会見で「米国から駐留経費について、話があったということはないし、交渉も始まっていない」と内容を否定した。

 それでも、日本が基地を提供する代わりに米側が防衛義務を負う安保条約の構造について、トランプ氏が「不公平」と認識している以上、実際の交渉で増額要求を突きつけてくる可能性は高い。外務省幹部はボルトン氏の著書を「米側の考えはこうだという『警告』みたいなもの」とみる。

 駐留経費に関する特別協定は来年3月末に期限が迫り、今夏以降、交渉が本格化する。今年11月の大統領選でトランプ氏が落選しても、対抗馬となる民主党のバイデン前副大統領が、東アジアの安全保障環境の変化を理由に増額を要求してくる可能性は残る。

 一方、「拉致問題の解決を直接働きかけてもらうチャンス」(外務省幹部)と捉え、安倍晋三首相らが日本人拉致問題を取り上げるよう求めた米朝首脳会談で、トランプ氏は要望を実行していたことが著書で裏付けられた。ただ、2018年6月のシンガポールでの初の米朝首脳会談では、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に制裁緩和への過大な期待を抱かせたとボルトン氏は批判しており、トランプ氏の日本の安全保障への認識の甘さもあらわになった。(力武崇樹)

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