株価・外為

株主総会も「バーチャル」へ 警察当局、業績悪化予想しトラブル警戒

 新型コロナウイルスの影響で株主総会の形が様変わりしている。企業側は感染を招く「3密」を防ぐため来場人数を絞り、ビデオ会議アプリなどを活用した「バーチャル株主総会」も採用。大企業が集まる東京都内でも例年、警視庁がトラブル対応に当たるが、今年は最低限の人員で臨む。ただ、コロナ禍で業績が落ち込む企業は多く、紛糾する恐れもあるため、同庁は開催がピークを迎える26日を前に警戒を強めている。(千葉元)

 役員は遠隔参加

 ヤフーを傘下に持つZホールディングス(千代田区)。社内に設けた会場に、ビデオモニターやカメラが並ぶ。飛沫(ひまつ)感染を防ぐ透明のついたてに囲まれたステージに登壇した川辺健太郎社長は、レンズに向けて語りだした。

 「世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」。23日、同社が初めて開催したバーチャル株主総会の一幕だ。

 会社法の規定で、実際の会場を完全になくすことはできず、事前応募があった株主約20人が来場。一方、同社サイトからオンラインで約90人が参加した。

 総会は時間を短縮し、オンラインの株主にも質問や議案への投票が認められる「出席型」で実施。川辺社長は、10月に控えるLINE(ライン)との経営統合などについて説明した。モニターに「海外展開をどうするのか」などと文章で質問が寄せられ、川辺社長は読み上げた上で回答した。

 経営陣も議長の川辺社長以外は自宅などから遠隔参加。参加者は株主らが実際に一堂に会する「リアル株主総会」形式だった昨年(1751人)と比べて少数だった。機材のトラブルもなく、同社は「当日の質問に全て答えることができたのは大きな成果。今後も株主にネットを通じて出席していただけるよう検討していきたい」とした。

 警察官も場外

 新型コロナ対策を背景に今月実施の株主総会でバーチャル形式を採用した企業は、昨年の数倍にのぼるとの分析もある。総会中のトラブル防止を担う警察当局も、対策を変えた。

 警視庁組織犯罪対策3課は5月中旬、株主総会特別警戒本部を設置。これまでは警察官が会場内で状況を見守ったが、今年は3密回避のため入り口付近をはじめとする場外に待機、状況はモニターなどを通じて確認する。配置人員も絞る。

 警察庁によると、6月中に株主総会を開催するのは全国で約2千社。このうち集中日の26日には約640社の実施が見込まれる。1850社から要請を受け、約3600人態勢で警察官が警戒に当たる。

 荒れる可能性も

 かつて、企業から利得を得ようと総会を荒らす「総会屋」が社会問題化した。警視庁によると現在、都内で動向が確認される総会屋は20人程度と活動は下火になったが、完全に止まったわけではない。

 警視庁は今月、新潟市の土木建築会社の男らを会社法違反容疑で逮捕した。都内に本社を置くゼネコンのマンション関連工事を落札できなかったことをめぐり、「株主総会に出て社長と担当者を糾弾してやる」などとゼネコン社員を脅し、受注を要求したとされる。

 2人は警察当局が認定する総会屋ではない。ただ、警視庁幹部は「総会屋の動きは全体的に下火とはいえ、それに準ずる行動を取ろうとする者がいる。警戒が必要だ」と強調。「新型コロナの影響で各社から業績悪化の報告も予想される。一般株主から不規則発言が出るなど荒れる可能性があり、留意して臨みたい」と話した。

     

バーチャル株主総会 

 実際の会場に加え、進行をインターネット上でも同時配信する株主総会。「ハイブリッド(複合)型」と呼ばれる。日本は会社法の規定で実際の会場をなくせないが、米国などではネットのみの「バーチャルオンリー型」の開催が主流。ハイブリッド型には株主が当日に質問や投票による議決権行使ができる「出席型」、事前投票を済ませ傍聴のみとなる「参加型」の2種類がある。場所を問わず株主が参加できるが、サイバー攻撃などセキュリティー面を懸念する指摘もある。

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