海外情勢

コロナ防ぐ「手洗いの水」を 途上国に簡易設備支援

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、アジアやアフリカの発展途上国では予防の基本である「手洗い」さえままならない人々がいる。水やせっけんによる手洗い設備が足りないためだ。水・衛生問題に取り組む英国の非政府組織(NGO)「ウォーターエイド」が簡易手洗い設備の緊急支援を続けているが、NGOの日本法人では静岡県出身の女性職員が「現状を知ってほしい」と訴える。

 NGOは1981年に英国で設立。わが国では天皇陛下が水問題の専門家として知られるが、NGOの会長はチャールズ皇太子が務める。世界26カ国で井戸水や湧き水、雨水による給水設備やトイレの設置、手洗い習慣などの啓発を展開。今回の新型コロナでは、バスターミナルや駅、市場など密集しやすい場所に簡易手洗い設備を設置するなどの支援を行っている。

 NGOの日本法人で、特定非営利活動(NPO)法人「ウォーターエイドジャパン」(東京都)の職員、杉山真里菜さん(30)は静岡市駿河区出身。事務局に勤めて2年になるが、新型コロナの世界的大流行で活動の重みは一気に増した。

 死者少ない理由

 日本政府の専門家会議は先月29日、国内で新型コロナによる死者、重症者を欧米諸国より低い水準に抑えられた要因を分析。クラスター(感染者集団)対策などが奏功した前提として、(1)国民皆保険による医療へのアクセス(2)地方でも医療レベルが高い(3)保健所が全国に整備されるなど地域の公衆衛生の水準が高い(4)帰宅したら手を洗うなど市民の衛生意識が高い(5)比較的清潔を重んじるなど、もともとの生活習慣(6)政府からの自粛や休業要請に対する協力の度合い-を挙げた。

 水とせっけんでこまめに手を洗うことは、感染予防の最も重要な方法の一つだが、世界保健機関(WHO)などの統計によると、世界の家庭の4割に水とせっけんを使える手洗い設備がない。杉山さんは「水・衛生がこれほど大切なとき、手洗いすらできない人が世界に30億人いる現実を知ってほしい」と話す。

 当たり前の重み

 WHOは今月11日、約13億人が住むアフリカ54カ国で感染者が20万人を超え、死者は5600人を超えたと発表した。アフリカで感染者が初めて確認されてから10万人に達するまで98日かかったが、10万人から20万人に増えるのにかかった日数はわずか18日だったという。流行が加速し、地方にも広がり始めている。

 杉山さんは事務局で、熊本地震の被災者という女性からの電話を受けたことがある。女性は寄付を申し出た上で「地震で断水し、蛇口をひねれば水が出る当たり前のことが奪われた経験をして、初めて水の大切さを知った」と話した。

 杉山さんは「私も静岡で『東海地震が来る』とずっと言われて育った。災害は日本のどこで起きてもおかしくない。水・衛生の問題は決してひとごとではなく、『もし自分が』と考えて、世界の問題にも目を向けてほしい」と訴える。

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