山本隆三の快刀乱麻

欧州主要国は新型コロナ後EVに力 (1/2ページ)

 経済回復策として支援強化

 世界中を席巻する新型コロナウイルスは、各国の電力需要の減少を通じて再生可能エネルギーに影響をもたらしている。

 3月23日に都市封鎖を開始した英国では、電力需要量が封鎖前との比較で4月中旬には20%以上落ち込んでしまった。全電力供給の10%を占める洋上風力を含め、英国の電力供給の約4分の1は風力発電と太陽光発電設備に依存しているが、風力、太陽光は電力需要が落ち込んでも発電量を調整できないので問題が発生する。

 2018年の北海道胆振東部地震により、電力供給量と電力需要量は常に一致していなければ停電になることが広く知られることになった。蓄えるコストが高いため、ためることが難しい電気では、常に需要量に合わせて発電量を調整しなければならない。発電量が需要量を下回れば停電が発生するが、発電量が多過ぎても停電になる。

 英国全土の送電網管理を行っているナショナル・グリッドが発電停止を指示できない中小の風力・太陽光設備が全国にあり、これらの設備からの調整できない供給量を含めると、低迷する需要量を供給量が上回る可能性が出てきた。

 結局、ナショナル・グリッドは再エネ事業者に補償を行い、前日に停止の指示を行える新制度を導入し停電を防ぐことになった。補償に加え、需要量の大幅落ち込みにより需給調整がより複雑になったこともあり、今年の需給調整費は昨年より5億ポンド(約675億円)増え、20億ポンドになると予想されている。

 この状況を受け、英国の大手発電事業者などが電力ガス市場規制庁に対し、電気自動車(EV)が仮に600万台あり送電網とつながる形で今回の需要下落時に活用可能であれば、1億3300万ポンドの需給調整費を節約することが可能だったとする書簡を提出した。

 今、英国にあるEVはプラグインハイブリッド車(PHEV)を含め約27万台なので、600万台には程遠いが、コロナ禍からの経済回復策として、欧州主要国政府はEV導入支援策を強化する構えだ。

 相対的に減少幅小

 欧州自動車工業会によると、欧州の自動車産業は27カ国に309工場を持ち、年間1920万台の生産を行っている。製造現場での雇用は350万人、間接雇用を含めると1380万人、EUの全雇用の6.1%を占めている。経済面ではGDPの7%を占める欧州産業の屋台骨だが、コロナ禍で大きな影響を受けた。

 多くの国で都市封鎖が行われた今年4月、EU27カ国の乗用車販売台数は、27万682台、前年同期比76.3%減となった。イタリア97.6%減、フランス88.8%減、ドイツ61.1%減、スペイン96.5%減、EU外でも英国97.3%減と主要国での販売は壊滅状態になった。販売の落ち込みは当然、生産にも影響を与え、ドイツの自動車生産台数は前年比97%減と報じられた。

 乗用車販売が大きく減少する中で、減少幅が小さくシェアを上げているのが、PHEVを含むEVだ。世界のEV市場では購入に強力な支援策を導入した中国が大きく先行していたが、中国国内のEVメーカーがあまりに増えたため、中国政府は昨年6月に性能が低いEV購入への補助金を打ち切り、さらに補助金減額の制度変更を行った。

 その結果、中国EV市場は昨年後半から冷え込んでしまった。欧州ではノルウェー、オランダなどEVに対する支援策が充実している国で販売が増えていたが、昨年から英国、ドイツ、フランスなどの主要市場で手厚いEV購入支援策の導入が始まり、販売台数が落ち込む中国を尻目に欧州市場で販売台数が増え始めた。

 2019年、中国のPHEVを含むEV販売台数は106万台(前年比2%減)に対し、英国7.5万台(49%増)、ドイツ10.9万台(61%増)、フランス6.1万台(31%増)と販売が伸びた。今年になっても、欧州での第1四半期のEV販売台数は16.7万台、前年同期比100.7%増と好調だ。市場シェアは、前年同期の2.5%から大きく伸び6.7%に達した。コロナ禍により乗用車販売が落ち込む中でも、相対的に減少幅は小さくなっている。乗用車販売が壊滅的であった4月でも、EV販売台数は前年比16%減にとどまったと報じられている。

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