海外情勢

コロナが若者を打撃 非正規雇用の放置は「時限爆弾だ」

 約10年前の金融危機では2000年代に成人あるいは社会人になる「ミレニアル世代」が傷を負った。今回の新型コロナウイルスでは、社会に出て間もない「Z世代」が経済的な痛みをもろに受けている。世界中で巨額の景気刺激策が打ち出されているが、パンデミック(世界的大流行)で世代間格差が悪化する中、若年層への打撃を和らげるには至っていない。

 豪で失業率急上昇

 その一例がオーストラリアだ。総額2600億豪ドル(約19兆5000億円)に上る経済対策にもかかわらず、15~24歳の失業率は16.1%に急上昇。対照的に26歳以上では約5.5%にとどまる。

 オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のシニアエコノミスト、キャサリン・バーチ氏によると、若年層労働者の約25%は一時的な職に就いており、雇用期間が1年に満たないため政府の主要な賃金補助パッケージの対象外となっている。他の年齢層すべてで、いわゆる非正規雇用の割合は6.5%だ。

 これは何もオーストラリアに限った話ではない。パンデミックが長引くにつれ、10年前の世界金融危機で生じた世代間の断層が露呈しつつある。金融危機はミレニアル世代に大きな打撃を与え、Z世代(米シンクタンク、ピュー・リサーチによると1996年以降に生まれた層)には不安定な雇用環境と不十分な就業機会というレガシー(負の遺産)が残った。

 西側諸国のいたるところで、財政支援策に関係なく、若年層労働者が失業しがちだ。

 さらに豪州では、今回の危機と政府の対応によって、世代間の富の格差も拡大するリスクがある。減税が高齢者の不動産投資を後押ししたこともあって、住宅価格が若者の手に届かない水準に高騰しており、若年層の住宅所有率は過去最低水準に沈んでいる。

 ANZのバーチ氏は「若者が置き去りにされないようにするには、現在の政策に加えて、大規模で目標を絞った継続的な支援が必要だ。若年層の労働市場は今回のショックで世界金融危機以前より不安定になっている」と指摘する。

 英シンクタンクのレゾリューション・ファンデーションの調査よると、英国では学生を除く18~24歳の従業員の3分の1が職を失ったり、一時帰休となっている。一方、35~44歳ではこの比率は15%未満だという。定まった労働時間のない待機就労者や派遣労働者など非正規の労働者ははるかに悪い状態だ。英国の雇用支援策の対象となるには、3月19日までに雇用されていなければならない。

 発端は金融危機

 Z世代の雇用形態の多くが非正規に切り替わったのは前回の金融危機に端を発している。格差問題を研究する豪州のシンクタンク、パーキャピタのリサーチエコノミスト、シャーリー・ジャクソン氏によると、多くの新入社員が解雇され、再び正規採用されなかったため、若年層労働者はそれ以前の世代に比べ、かなり長期間にわたって小売業やホスピタリティー産業などの業種にとどまらざるを得なかったという。

 ジャクソン氏は「世代的な傷痕、つまり若者を労働市場の外に長期間放置することで、彼らが将来より良い仕事を得る可能性は低くなる。それは時限爆弾だ」と警鐘を鳴らしている。(ブルームバーグ Emily Cadman、Sybilla Gross)

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