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災害リスク高い地形 前線が停滞…要因重なり被害拡大

 梅雨前線に伴う記録的な豪雨が九州に降り始めてから11日で1週間。被害は熊本県を中心に広範囲におよび、犠牲者は計60人を超えた。行方不明者も多数おり、被災地では今も捜索活動が続く。被害はなぜここまで広がったのか。

 「今回は不幸なことがいくつか重なってしまった」。立命館大の高橋学特任教授(災害リスクマネジメント)はこう指摘する。

 まず要因として挙がるのが、被災地の地形だ。熊本県人(ひと)吉(よし)市や大分県日田市など、被災地の多くが盆地に位置し、盆地を抜ける川の下流域は幅の狭い谷になっている。一定の量を超える雨が降ればすぐにあふれてしまい、もともと災害のリスクの高い場所だったといえる。

 一方、避難所や、避難に人手が必要とされる老人介護施設が浸水想定区域内にあるケースもあった。高橋氏は「ハザードマップと連動させて、まちづくりを行う必要がある」とする。

 気象的な要因もあった。今回は各地で降水量が観測史上の最大値を更新。元下関地方気象台長でNPO法人「環境防災総合政策研究機構」の田代誠司上席研究員は「梅雨前線の南側にある暖かい空気と北側にある冷たい空気の均衡の取れた状態が続いたことで、梅雨前線が停滞した」と解説する。

 ただ、一般的に梅雨時は局地的に雨雲が発達し降水するというケースが多々あり、避難が必要なほどの大雨かどうか予測するのは難しいという。

 それまでも雨は降っていたものの、結果として、気象庁が熊本、鹿児島両県に特別警報を出したのが4日午前4時50分、自治体が避難指示を出したのは熊本県球(く)磨(ま)村が午前3時半、人吉市が午前5時15分など、4日未明から早朝にかけてになったことも、非運だった。

 被災者支援に取り組むNPO法人「茨城NPOセンター・コモンズ」の横田能(よし)洋(ひろ)代表は「暗い中で雨が降っていたり、道が冠水したりすると、移動に危険が伴い、避難のハードルが上がる」と説明。加えて被災地域は高齢者が多く住んでおり、横田氏は「車を持っていなかったり、避難所がバリアフリーかどうか慎重になったりするお年寄りも多く、そうなると避難のハードルはさらに高くなる」と語った。(江森梓)

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