海外情勢

米が「香港ペッグ制」も標的か 対中制裁案で弱体化検討

 トランプ米大統領の側近の一部が香港ドルの米ドル・ペッグ制(固定相場制)の弱体化を検討していることが分かった。複数の関係者が明らかにしたもので、トランプ政権は中国による「香港国家安全維持法」施行を受け、対中制裁で複数の選択肢を考察している。

 HSBC向け措置優先

 関係者によると、香港の銀行による米ドル購入を制限することでペッグ制に打撃を与える可能性がある。ポンペオ米国務長官のアドバイザーが幅広い議論を進める中でこうした案が浮上したとされる。だが、ホワイトハウスの高官には同案は上げられておらず、関係者はまだ同案への幅広い支持が集まっていないことがうかがわれるという。

 また、米政権内には、こうした措置を実行した場合に打撃を被るのは中国ではなく香港の銀行と米国だけだと懸念する向きから強い反対があると関係者は話している。

 別の関係者は、ペッグ制を弱体化する提案は現在検討中の選択肢リストの下位にあると述べた。他に選択肢として上がっている案には、米国と香港の犯罪者引き渡し条約の破棄や香港警察との協力終了などがあるという。

 もっとも2人の関係者によれば、トランプ政権は香港に拠点を置く銀行、特にHSBCホールディングスを標的とした措置を打ち出すことを優先しているという。ポンペオ長官は先月9日の声明でHSBCアジア太平洋部門の王冬勝(ピーター・ウォン)最高経営責任者(CEO)をやり玉に挙げ、「香港の自治を破壊する中国政府の壊滅的な決定」を支持する文書に署名したと非難。「そのように忠誠を示してもHSBCが中国政府からの敬意を得ることはほとんどなかったようだ。中国は英政府に政治的影響力を及ぼすために、同行の中国事業を引き続き利用している」と断じた。

 「人民銀に供給能力」

 一方、香港の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は先月3日に中国中央テレビ局(CCTV)で、米政府が香港に制裁を科しても中国人民銀行(中央銀行)が米ドルを供給できると話した。同長官は「米ドル・ペッグ制は香港のマネタリーベースの2倍以上に当たる4400億米ドル(約47兆円)以上の外貨準備に支えられている」と述べ、「必要な場合、香港は人民銀との通貨スワップラインを活用でき、香港ドルと米ドルをカバーすることになる」と続けた。

 ただ、香港ドルと米ドルとのペッグ制が崩壊する可能性は大手金融機関の注目の的となっている。関係者によれば、ヘッジファンドマネジャーのカイル・バス氏が創業したヘイマン・キャピタル・マネジメントは、(香港ドルの)米ドル・ペッグ制が崩壊する方向に一か八かを賭ける新たなファンドをスタートさせた。

 香港は1983年以来、為替レートを1米ドル=7.8香港ドルとするペッグ制を採用しており、1米ドル=7.8香港ドル近辺を中心とする狭い許容変動幅が設定されている。(ブルームバーグ Nick Wadhams、Jenny Leonard)

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