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Go To トラベル 「感染飛び火」に地方は警戒 豪雨被災地も困惑

 新型コロナウイルス感染が再び広がる中、政府が22日に始める観光支援事業「Go To トラベル」に懸念が強まっている。政府は対策徹底を強調、旅行会社も「お得」とPRするが、地方は人の往来で「クラスター(感染者集団)が起きたら」と飛び火を警戒。不明者捜索や復旧が続く豪雨被災地も、受け入れに余裕はない。

 「多客期の夏休みを対象に、と要望があった」。赤羽一嘉国土交通相は、8月上旬の開始予定を早めた理由をこう説明。イベント、スポーツ観戦の入場制限は10日から緩和されており「Go Toだけ変更しなきゃいけないとは認識してない」という理屈だ。

 この事業は国内旅行代金の50%を支援。35%分は代金から割り引き、15%分は旅先で買い物、飲食に使える地域共通クーポンを配る。ただ配布準備には時間がかかり、政府は割引事業を先行させる方針に転換、前倒しが可能となった。

 背景には、関連倒産が相次ぎ、訪日客が戻らない現状では「国内観光を回復させないと業者が持たない」(国交省幹部)との危機感がある。

 旅行各社は早速、顧客獲得に乗り出した。宿泊予約サイトを運営する「一休」は、独自ポイント5%分を上乗せし「最大40%還元」をうたう。

 阪急交通社の担当者は「夏休み本格化を前に予約ができ、旅行者も使いやすい」と期待。「ツアーは対策を取っている宿泊施設を選び、検温も行う」と説明する。

 政府は、感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指すとし、菅義偉官房長官は13日「延期は全く考えていない」。西村康稔経済再生担当相は、空港や駅で3密回避を呼び掛ける意向を示した。

 だが、地方とは温度差が大きい。福島県の内堀雅雄知事は13日の記者会見で「首都圏などで感染が再拡大していることに強い憂慮を抱いている」と発言。鳥取県の平井伸治知事も12日「感染拡大地域からの観光が推奨されるべきなのか」と疑問を投げ掛けた。

 北海道羅臼町で遊覧船を運航する会社の担当者は「観光客回復は期待するが、感染が広がり再び休業になるのは避けたい。地元の人も不安が大きいだろう」と心配。中部地方の旅行業協会幹部は「政府は何を考えているのか。他県から来た人に後ろ指を指す雰囲気がまだ強く、感染者急増の首都圏から人は呼べない」と漏らした。

 記録的な豪雨の被災地では観光どころではない。浸水した大分県由布市の湯平温泉。湯を引く管の復旧に時間がかかり、旅館組合の担当者は「部屋に問題はなく客を受け入れたいが、通れない道路もある。悔しいが、開始を遅らせてもらったほうがいい」と訴える。

 全国知事会は国への緊急提言で「Go Toが感染拡大要因になることだけは避けなければならず、豪雨被災地の観光は困難」と指摘。まず近隣限定の旅行から始め、段階的に範囲を広げる仕組みを求めている。

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【用語解説】Go To トラベル

 新型コロナウイルス感染症の影響で需要が落ち込んだ業界の支援策「Go To キャンペーン」の一つ。政府は支援策全体で1兆6794億円を支出する。規模が最も大きい「トラベル」は宿泊、日帰り旅行の代金を割り引くなどして、旅行消費を促す目的がある。他に飲食店の利用料金を割り引く「イート」、コンサートや演劇、スポーツなどのチケットを割り引くなどの「イベント」、商店街の行事、販売促進を後押しする「商店街」の各事業がある。

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