海外情勢

米でデジタル格差拡大の兆し 遠隔授業の無料接続終了で対策急務

 米国で新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮する家庭が増えるのに伴い、デジタル格差が拡大する兆しを見せている。各地でロックダウン(都市封鎖)が相次いで解除される中、遠隔授業を支援する目的で提供されていた無料のインターネット接続サービスが打ち切られ、十分な教育を受けられなくなる家庭が増えており、対策が急務となっている。

 数千万人が余裕なし

 ニューヨーク州バファローのラキア・アクターさんの3人の子供たちが通う学校は3月から遠隔授業に移行することになった。貨物航空大手フェデックスで働く夫の年収は3万ドル(約320万円)で、家計は苦しく、自宅にネット利用環境を整える経済的余裕はなかった。

 9歳と7歳の娘の学習が遅れることを心配していたところ、ケーブルテレビ(CATV)大手チャーター・コミュニケーションズが、ロックダウン中の貧困家庭を対象にネットへの60日間限定の無料サービスを提供していることを知り、遠隔学習を受けることができた。ところが5月に入り無料期間が終了。月額64ドルが支払えず泣く泣くサービスをキャンセルした。

 米国でネットに接続する経済的余裕のない人は数千万人に上る。チャーターや同業のコムキャスト、情報通信・メディア複合企業のAT&Tなどは、夏前の学年末まで遠隔授業を受ける生徒や教師を支援しようと、今年に入り無料の接続サービスを開始した。だが、こうしたサービスのいくつかが利用期限を迎えている。

 ネットへのアクセス拡大に特化した非営利組織のナショナル・デジタル・インクルージョン・アライアンス(NDIA)のエグゼクティブディレクター、アンジェラ・シーファー氏は「無料のネット接続サービスは有効だったが、この先大きく広がるデジタル格差への応急処置にすぎない。長期の解決策を見いだす必要がある。格差の問題は新型コロナ以前から存在したが、遠隔学習が広がったことで多くの人がこの問題に気付かされた」と話す。

 デジタル格差は、無料接続サービスの利用者数が問題の深刻さを浮き彫りにする。チャーターは同社無料サービスを利用する学生や教師、その家族が40万人を超えると予想。また、コムキャストの広報担当者は、ロックダウン開始から数週間後の3月末時点で同社の無料接続サービスの契約世帯数は3万2000世帯だったとし、AT&Tは15万6000人以上が同社のワイヤレスやブロードバンド、動画サービスを継続するための資金の支援制度を利用したという。

 一部で延長の動き

 感染拡大が長引く中、デジタル格差のより長期的な対策として6月18日にはコムキャストが60日間の無料サービスの年内継続を発表した他、AT&Tは同21日までに学校からの要請があれば、学生用の無制限無線接続サービスを8月終盤まで延長する計画だ。また、連邦通信委員会(FCC)のパイ委員長は各社に感染拡大により経済的に困窮する利用者が決済方法をより柔軟に選択できるようにすることや、学生向けの無料接続サービスの継続と利用枠の拡大を要請した。

 バファローのエルムウッドビレッジ・チャータースクールではネット接続ができない家庭のためにWi-Fiが使えるホットスポットを約20カ所用意した。同校の運営責任者、リズ・エバンズ氏は「これまでネットを利用できなかった生徒は既に学業に大きく後れが出ている。新学期前のサマースクールでもネット接続は必要で、受講できなければこうした生徒は次の学年の始まりまでにさらに大きく遅れてしまうだろう」と指摘した。(ブルームバーグ Gerry Smith)

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