海外情勢

人民元の国際化に焦る中国 米国との緊張激化で金融面に波及

 米ドルへのアクセスが制限されるかもしれないという課題に対し、中国が出している答えは自国通貨をより多くの人に使ってもらうというものだ。

 米中関係緊張の影響が金融面にもますます波及するなか、中国では人民元の国際化をめぐる新たな動きに火が付いている。ここ数週間、政府当局者や影響力ある市場関係者の間では、より国際化への一層の努力を求める声が高まっている。香港国家安全維持法(国安法)の施行に対する米国からの報復の脅威を受け、人民元の国際化は新たな重要性を持った形だ。

 ドルアクセス危機

 米国の利益や世界の金融システム全体にも大きなダメージを与える恐れがある思い切った行動に米国が出る公算は小さい。しかし、そうしたリスクを意識させるだけで十分な警鐘となっている。オフショア債券とオフショアローンの規模が計1兆ドル(約107兆円)近くに上り、国有銀行の負債が1兆1000億ドルとなる状況で、中国の企業や貸し手にとってドル資金へのアクセスは死活問題だ。

 スタンダードチャータードの大中華圏・北アジア担当チーフエコノミスト、丁爽氏(香港在勤)は「人民元の国際化は、中国政府にとって望ましいものから不可欠なものに変化した」と指摘。「政治状況が不透明な中、中国はドルに代わるものを見つける必要がある。それができなければ国に金融リスクが生じることになる」と述べた。

 世界の決済と中央銀行の外貨準備に占める人民元の割合は約2%と依然低い。また、中国金融市場の着実な開放は外国からの資金流入を促しているが、本土企業の株式や債券に占める外国人投資家の保有比率は相対的に小さい。

 金融制裁の可能性

 中国の焦りは最近の当局者発言からも見て取れる。中国証券監督管理委員会(証監会)の方星海副主席は先月、人民元の国際化を通じて「潜在的なデカップリング(切り離し)に対するわれわれの防御能力は大幅に強化される」と述べた。

 また、中国人民銀行(中央銀行)の貨幣政策委員会委員だった黄益平氏は、ドル依存度を下げることが中国には必要だと語った。

 人民元を円やユーロ並みの国際通貨にする動きを加速させるためには、中国は資本規制を弱める必要がある。しかし、それは資本流出の不安定化リスクを高めることにつながる。輸入を拡大して経常収支を継続的に赤字にする道もあるが、こうした政策変更も想定するのは難しい。

 中国人民銀の貨幣政策委員を務めた余永定氏は「人民元の国際化は資本勘定における兌換(だかん)性に大きく依存しているが、中国はその準備がまだできていない」と指摘。そのうえで「中国は、米国による一連の金融制裁の可能性という深刻な課題に直面しており、中国の金融資産が凍結される恐れも排除できない。規制当局は不測の事態に備えた計画を持っていると私は考える」と述べた。(ブルームバーグ Tian Chen、Jun Luo)

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