専欄

香港、金融センター機能の行方は

 中国返還以前の香港には、自由の空気があふれていた。中国各地を訪問した後、最後に香港に抜けると、それまで張り詰めていた緊張感が緩んで、開放的な気分になったものである。ところが返還後、徐々にその良さが失われていき、今回の香港国家安全維持法の施行によって、とどめを刺された感じがする。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 それでも国際金融センターとしての機能は最近まで、まずまずの役割を果たしてきた。英国のシンクタンクが発表している世界の国際金融センターランキングをみると、香港はニューヨーク、ロンドンにはかなわないものの、シンガポールとともに、3位の地位を争ってきた。

 ところが昨年の民主化デモの激化によって、国際金融センターとしての香港にも懸念が広がり、最新のランキングでは6位にまで落ちてしまった。このままずるずると地位を下げていくのだろうか。

 昨年の経済成長率は民主化デモが影響して、わずかではあるが、マイナスに落ち込んだ。さらに今年の第1四半期は新型コロナウイルスの感染拡大も加わって、マイナス幅が一気に拡大した。輸出も昨年初めからほぼ毎月、前年同月を下回る状況が続いている。外資系企業の中には、アジアの拠点を香港から他に移す動きも出ている。とりわけ米国系企業は、在香港米国商工会のアンケートでは、36%が移転を検討中と答えている。

 一方では、国際金融センターとしての機能を一気に喪失するわけではない、との見方もある。中国が経済面から香港へのてこ入れを強化しているからだ。その一例が、米国の株式市場に上場している中国企業が、香港市場に重複上場する動きである。また、香港国家安全維持法の施行によって、デモ騒ぎは少なくなり、治安はむしろ安定化に向かうとみる向きもある。

 外資系企業にとっても、中国と商売を継続していくためには、多少の不自由さがあっても、香港を利用せざるを得ない面がある。その機能は、シンガポールでは代替できない。

 結局、今後の行方は米トランプ政権の出方次第となろう。香港の金融機関を対象に、外貨取引の禁止などのドラスチックな措置が取られれば、香港の国際金融センターとしての機能は停止してしまうが、さすがにそこまで予想する向きは少ない。しかし、秋の米大統領選挙に向けて、徐々に制裁のレベルを上げていけば、資本流出にはずみがつくかもしれない。

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