海外情勢

EU離脱で労働力の高齢化に拍車 英を待ち受ける先進国で最も深刻な不況

 英国で新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を機に、産業界の労働力高齢化の問題が深刻化している。欧州連合(EU)の国境のない労働市場からの労働力供給もEU離脱で難しくなりそうだ。英国の生産性は既に産業革命以降で最低の水準にとどまっている。同国では今後、先進国で最も深刻な不況が予測される。

 若年層参入には壁

 イングランド南部の都市、ルートンにある金属加工会社ブルードラーの工場では、60歳を超える従業員が全体の約6割を占めている。同社のエイドリアン・ヘイラー最高経営責任者(CEO)は「ここ数年、見習い実習を若者の採用につなげようとしてきたが、悲惨な結果だ。経験豊かな労働者の育成には時間が必要だ。30~40代の熟練技術者の採用に力を入れている」と話す。

 労働問題の独立系政策研究機関ラーニング・アンド・ワーク・インスティテュート(英南西部ウェールズ)のステファン・エバンズCEOは「失業者が爆発的に増加する中で、高齢化と、労働市場や移民規制の変化の波が同時に到来している。今この領域に予算を投じることで、こうした課題を一挙に改善できる」と指摘する。

 働き手の高齢化が最も深刻なのがトラック運送業だ。英国内の取扱貨物の98%を占めるトラック輸送は物流のバックボーンだが、道路運送協会によると運転手の平均年齢は約57歳だ。他業種の平均賃金をわずかに上回る賃金で、運転席で長時間を過ごすトラック運転手の希望者は少ない。加えてトラックの運転免許取得には5000ポンド(約67万2400円)がかかり、この投資をいとわない若者を見つけるのは容易ではない。

 この結果、人員不足は約6万人に上り、各社はここ数年間、国外に人員の供給を求めてきた。英国を除く欧州各国の運転手が60%に上った日もあった。だが離脱後は「年収2万5600ポンド以上」という移民の条件がハードルになりそうだ。

 出生率が記録的な落ち込みとなる一方で医療の進歩で寿命が延び、トラック運送業だけでなく英経済全体が移行期にある。65歳以上で仕事を続けている人は11%余りで、20年前の2倍を超える。

 働く人の割合が高まるのは経済にとってプラスだが、新陳代謝が行われず、若年層の参入のための門戸が閉ざされた状態はプラスではない。

 職業訓練は不人気

 若い労働者が失業の荒波の矢面に立つ状況に危機感を表明していたスナク財務相は9日、300億ポンドの減税を柱とする経済刺激策を発表した。

 こうした中、新型コロナ感染拡大を機に解決策が見えてきた課題もある。新型コロナ禍で職を失っても、的を絞った適切な支援で再訓練し、必要な能力を身に付けることも可能だ。

 ただ英国の若い労働者の技術や仕事に対する姿勢は、職業訓練よりも高等教育を推奨してきた英国の歴代政権の方針の影響を強く受けている。2010年の調査で16~18歳での技術訓練受講者の割合は英国で32%にすぎなかったのに対し、英国を除く欧州では半数近くに上った。(ブルームバーグ Lucy Meakin)

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