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台湾の李登輝元総統が死去 97歳「民主化の父」

 【台北=矢板明夫】台湾の民主化を進め、初の直接選挙による総統を務めた李登輝元総統が30日、入院先の台北栄民総医院で死去した。97歳だった。李氏は今年2月、自宅で牛乳を誤嚥(ごえん)し病院に搬送され、肺浸潤がみられるとして投薬による治療を受けたが、その後も入院を続けていた。

 28日夜に容体が急変したとの情報が流れた。29日午前、蔡英文総統、頼清徳副総統、蘇貞昌行政院長(首相に相当)が相次いで病院を訪れ、李氏を見舞った。

 李氏は1988年、終戦前から台湾に住む「本省人」として初の総統に就任。中国国民党による一党独裁体制の変革を進め、「台湾民主化の父」と呼ばれた。96年には初の直接選で当選を果たし、2000年まで計12年間、総統を務めた。中国からは「台湾独立派」と批判されたが、流暢(りゅうちょう)な日本語と親日的な言動で、多くの日本国民に親しまれた。

 李氏は日本統治時代の1923年(大正12)に生まれた。戦前の日本教育を受け、なかんずく旧制台北高等学校で高い教養教育を受けた。このことが、李氏が中華思想の呪縛にとらわれず、理性的で大局的な判断と、信念を実行しえた力の源泉だった。

 李氏は72年に外交関係を失ったものの、隣接する日本との関係が、台湾の安全保障や経済発展に欠かせないと信じていた。「だから反日教育をやめさせ、台湾の子供たちに正しく日本と日本人を理解させなきゃいけない」と話していた。

 96年に李氏が作らせた中学の教科書「認識台湾」はその一歩。新しい教科書で日本統治時代の功績も認める記述を大幅に取り入れ、歴史を再評価した。日台間の信頼感が増したのは、李氏の業績だといっていい。(河崎真澄)

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