海外情勢

パキスタン軍部主導で「一帯一路」復活 契約調印も持続性に懸念

 中国の巨大経済圏構想「一帯一路」がパキスタンで息を吹き返している。元同国陸軍中将のアシム・サリーム・バジュワ氏が采配を振るい、2年前のカーン首相就任以来、足踏みしていた110億ドル(約1兆1600億円)規模の関連インフラプロジェクト契約を復活、調印にこぎ着けた。2018年に発表された新規プロジェクトはなく、19年もごく少数にとどまっていた。

 中国向け債務膨張

 パキスタンと中国は7月初旬にかけ39億ドル規模の2つの水力発電プロジェクトと植民地時代に建設された鉄道を刷新する72億ドル規模のプロジェクトの契約に調印した。

 カーン政権は昨年、一帯一路関連事業である「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」の発電所や高速道路を含む700億ドル超のプロジェクトの管轄をバジュワ氏に一任。同氏は4月下旬、軍が国内の影響力を拡大し現役・退役軍人が10を超える政府重職を占める中で入閣した。

 軍は、昨年3カ所の中国関連プロジェクトがテロ攻撃を受けて以来、一段と影響力を強め、パキスタン全域に散在する中国資金による全てのプロジェクトの復活に関与している。イスラマバードに拠点を置くシンクタンク、タバドラブのシニアフェローで外務省の元首席顧問、モシャラフ・ザイディ氏は「カーン首相がCPECの進行を遅らせたのは疑いなく、また、エネルギー関連事業の復活と認可のほぼ全てにバジュワ氏が関わっている可能性が高い」と指摘する。

 ただ、こうしたプロジェクトに対するパキスタンの支払い能力には懸念が深まる。米国のシンクタンク、世界開発センターは「一帯一路により債務持続可能性に問題が生じる可能性がある8カ国」の一つにパキスタンを挙げた。また、国際通貨基金(IMF)の昨年の報告書によると、同国の今後3年間の対中債務は、IMFに対する返済額の2倍を超える。

 世界銀行の推定では中国の習近平国家主席が13年に打ち出した一帯一路構想で竣工(しゅんこう)済みか建設中のプロジェクトの全世界の総額は約5750億ドルに上る。だが中国が政治戦略上の利得のために貧しい国を借金地獄に追いやっているとの非難が高まり、近年同構想の進展は減速。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアフェロー、ジョナサン・ヒルマン氏は「実際には一帯一路と同様にCPECはまひしているため、一帯一路の旗艦的存在であるパキスタンでの順調さを示すことが重要性を増している」と指摘する。

 鉄道は10億ドル減額

 一方でバジュワ氏は6月、「CPECが停滞しているという誤った印象付けで中傷を受けている」とツイッターに投稿。中国外務省も、パキスタンでのプロジェクトは過去6年間で大幅に進んだと主張。「中国はCPECを堅固に支援する」と表明している。

 一帯一路プロジェクトではこれまでに、汚職や契約の瑕疵(かし)、過重債務、環境へのダメージに加え、現地労働者に対する中国人労働者の優先的な利用などの訴えが上がって、計画の練り直しが必要となる国も出ている。

 パキスタンの鉄道相によると、鉄道刷新のプロジェクトも再交渉を重ね当初見積もりの82億ドルは72億ドルと最終的に10億ドルの減額となったという。(ブルームバーグ Faseeh Mangi)

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