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日英通商交渉、乗用車関税の前倒し撤廃へ 茂木外相きょう訪問

 茂木敏充外相は4日の閣議後の記者会見で、5日から英国を訪問すると発表した。トラス国際貿易相らと会談する。茂木外相が訪英するのは、欧州連合(EU)との間に結んだ経済連携協定(EPA)が今年末、英国との間で効力を失うからだ。英国に輸出する日本企業にとっては急激に関税が上がり、新型コロナウイルス禍で悪化した経営環境に追い打ちをかけかねない。日本側は、日欧EPAで8年目とした乗用車関税の撤廃ペースを前倒しすることなどを目指しており、通商交渉を急ぎつつ、高いレベルの内容で合意できるかが焦点だ。

 「何が何でも詰めなければならないということで、対面での交渉になった」。外務省の担当者はこう打ち明ける。新型コロナの感染が拡大した後、通商交渉などはオンラインで開催されてきたが、日英が早期に大筋合意するには、ひざを突き合わせての交渉が必要だと判断した。

 英国のEU離脱に伴う「移行期間」は今年末に終了。切れ目なく来年1月に新協定を発効させるには、日本側は今秋の臨時国会で協定案の承認を受ける必要がある。新型コロナの影響もあり、英国との本格交渉が始まったのは6月。通商交渉の合意までには数年かかるのが一般的で、数カ月での合意は異例だ。

 早期決着が可能なのは、日欧EPAが新協定の“土台”となるからだ。日欧では乗用車にかかる関税を段階的に下げ、8年目の2026年に撤廃することにしている。日英新協定は来年1月に発効しても、日欧よりは2年遅くなるが、日本政府は発効から撤廃までの期間を短縮し、遅くとも同時期に乗用車関税を撤廃したい考え。自動車部品の関税の即時撤廃率は日欧EPAでは92%で、この水準をさらに引き上げる方向で交渉しているようだ。

 また、重要性が増しているデジタル分野では、日欧EPAでソフトウエアの設計図である「ソースコード」の企業への開示要求を禁止。日英では、人工知能(AI)にも使われる計算方法「アルゴリズム」などにも広げる方向だ。

 農産品では、日欧EPAで、EUからの農産品に関してソフトチーズなどで輸入枠を設けたが、英国に対してはこれらの品目で輸入枠新設は認めない構え。輸入枠を新設すれば、日欧EPAで合意した輸入数量を上回りかねないためだ。

 英国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加にも意欲を示している。日本政府は日英新協定をTPPの拡大につなげ、新型コロナで停滞する貿易を活性化させたい考えだ。

 ■日英新協定は、日欧EPAが土台になる

 (日欧EPA(2019年発効)→日英新協定での日本の姿勢)

 ≪乗用車関税≫

  ・26年(協定発効から8年目)に撤廃→前倒しへ交渉

 ≪自動車部品関税≫

  ・即時撤廃率92%→引き上げも視野

 ≪デジタル分野≫

  ・企業へのソースコード(ソフトの設計図)開示要求禁止→対象を拡大へ

 ≪農産品≫

  ・ソフトチーズなどで輸入枠→認めない方針

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