海外情勢

中国は「グアム・キラー」発射演習で牽制 米中国防相が電話会談

 【ワシントン=黒瀬悦成、北京=西見由章】エスパー米国防長官は6日、中国の魏鳳和国務委員兼国防相と約1時間半にわたり電話会談した。エスパー氏は、中国による台湾周辺や南シナ海での「情勢を不安定化させる活動」への懸念を表明し、中国に国際的な義務を順守するよう要請した。国防総省のホフマン首席報道官が記者会見で明らかにした。

 一方、中国国営新華社通信によると魏氏は、南シナ海や台湾問題、新型コロナウイルスの問題などをめぐって米側に「誤った言動」をやめるよう要求。また「海上での(衝突)リスク」の管理を強化し、情勢をエスカレートさせる危険な行動を避けるよう求めた。

 米側によると、エスパー氏は中国が国際法規やルール、慣行を守ることの重要性を訴えた上で、米中が「国防分野で建設的、安定的で結果重視の関係」を築くことの重要性を強調。さらに、中国が新型コロナをめぐる情報開示を一層進めるよう求めた。

 中国側によると、エスパー氏は「両国関係が緊張しているときに両軍は対話を維持し、危機をコントロールしてリスクを下げなければならない」と述べたという。

 米中両国が安全保障分野も含めて全面的な対立を深める中、軍事的衝突を回避する必要性を互いに強調した形だ。

 一方、この電話会談に先立ち、中国軍は米軍のグアム基地や空母を標的とする弾道ミサイルの発射演習を公開。南シナ海周辺で軍事プレゼンスを急速に高めている米軍を牽制(けんせい)した。

 中国人民解放軍系のサイト「中国軍網」は3日、ミサイル部隊「ロケット軍」の移動式ミサイル発射車両が砂漠地帯で発射演習を行う様子を写した動画を公開。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は7日付で、このミサイルが中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」だとし、発射の様子が公開されるのはまれだとする専門家のコメントを紹介した。発射の日時や場所は不明だ。

 DF26は射程約4千キロとされ、米軍基地のあるグアムを射程に収めることから「グアム・キラー」と呼ばれる。空母などを標的とする対艦攻撃も可能だ。

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