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「夏目友人帳」の舞台にもなった人吉市 豪雨復旧に向け一歩

 九州を襲った豪雨災害から1カ月が過ぎた。甚大な被害が発生、復興に向け動く熊本県人吉市の被災地で、老舗旅館や焼酎蔵がインターネット上で支援を募る動きが本格化している。「クラウドファンディング(CF)」での資金提供に加え、全国から寄せられる応援のメッセージが、復興に向かう人々の歩みに力を与えている。(中井芳野、尾崎豪一)

 「夏目友人帳」舞台

 「微力ですが支援させてください」「人吉の温泉街は必ず復活する」

 そばを流れる球磨(くま)川の濁流にのみ込まれた「人吉旅館」。7月23日に再建に向けてCFを始めたことをホームページで公表すると、ツイッター上で応援の声が続々と寄せられた。旅館の女将(おかみ)、堀尾里美さん(62)は「本当にありがたい。再建の糧になる」と目をうるませる。

 人吉旅館は、昭和9年創業で国登録有形文化財に指定されている老舗旅館。1階天井まで水に浸かり、水が引いた後の大広間には泥まみれの畳や机が折り重なった。「一時は廃業も本気で覚悟した」という。

 そんなとき堀尾さんが目にしたのが、人吉・球磨地域を舞台とした人気アニメ「夏目友人帳」のファンらが人吉旅館の復興を願うSNSのメッセージだった。

 実は堀尾さんも作品に魅せられたファンの一人。旅館の受付には所狭しとグッズを並べていた。こうした女将の“推し”ぶりも話題となり、ファンがアニメゆかりの地などをめぐる「聖地巡礼」の定宿となっていた。栃木県に住む長女の嘉恵(かえ)さん(22)が「私たちの復興を全国のファンたちも待ってくれている。再開に向けた支援を呼びかけよう」とCFを発案したという。

 CFがスタートすると、ファンらがSNSで拡散し、わずか1日半で目標額の500万円を突破。8月2日時点で約680人から1千万円以上の資金が集まった。旅館の修繕などには1億円がかかるとみられ、依然として厳しい状況に変わりはないが、堀尾さんは「旅館が元気になることが、みなさんへの恩返しになる」。今でも電話やSNSを通じて届くファンの激励が心の支えとなっている。

 「球磨焼酎の文化守る」

 一方、約500年の歴史を持つ人吉・球磨地域の名産「球磨焼酎」の倉庫なども浸水し、製造現場に大きな被害が出た。

 「球磨焼酎の文化を守らなければ」と意気込むのは人気銘柄「白岳(はくたけ)」シリーズを製造する「高橋酒造」常務の高橋宏枝さん(31)だ。高橋酒造は倉庫が浸水し、焼酎3万本を廃棄した。ほかの多くの焼酎蔵でも全面復旧が見通せない状況が続いており、高橋さんが中心となって、7月21日に「球磨焼酎支援プロジェクトサイト」を立ち上げた。

 サイトでは、「球磨焼酎酒造組合」に加盟する27の焼酎蔵の代表銘柄のロゴマークを記載し、各蔵のホームページを紹介。また、蔵元支援のCFや義援金を募っている企業・団体を紹介したほか、球磨焼酎を取り扱っている東京や京都の飲食店、購入できるショップを掲載するなどした。

 支援の輪は全国に広がり始めている。高橋さんは「故郷のために何かできないかという一心。可能な範囲で球磨焼酎の支援をしてほしい」と呼びかけている。

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