海外情勢

インドで食糧配給デジタル化計画 8億人に恩恵、出稼ぎ労働者復帰の一助に

 インド政府は世界最大の食糧配給制度を構築する。デジタル化によって、地方からの出稼ぎ労働者らが国内のどの都市にいても配給が受けられるため、移住が容易になる。新型コロナウイルスで落ち込んだ経済の復興につなげたい考えだ。

 デジタル化された全国共通の配給制度では約8億人が恩恵を受ける。モディ政権は、3月にロックダウン(都市封鎖)を実施した際に都市から流出した出稼ぎ労働者が元の職場に戻る一助としたい考えだ。世界最大規模の国民を巻き込んだ同国のロックダウンは布告から数時間で実施に至り、その後も多くの人が食糧に事欠き経済的に困窮する状態が続いている。

 新たな配給制度では、国内各地の政府公認店で配給カードの番号を伝え、生体認証を受ければ配給枠内の穀物を受け取れる。従来の制度では自分の出生地以外で配給を受けることはできず、労働者が仕事を求めて移住する際の障害となっていた。

 ニューデリー拠点の国際コンサルティング会社、IPEグローバルのマネジングディレクター、アシュワジット・シン氏は「出稼ぎで都市に来ていた労働者にとりロックダウン開始時に深刻な問題となったのは、食の安全保障が確保されておらず、穀物が手に入らなかったことだ。新しい配給制度は労働力が都市に戻る一助となるのは確実だ」と話す。

 インドは国家予算の約4%、年間1兆ルピー(約1兆4000億円)以上を食糧の補助に割く。政府が補助し、コメ、小麦、雑穀5キログラムを1キログラム当たり1ルピーで提供することが法で定められているためだ。モディ首相は新型コロナの感染が急拡大した6月、「政府はこれまで、米国人口の2.5倍、英国の12倍、欧州連合(EU)の2倍を超える国民に食糧を配給してきた」と強調した上で、11月まで配給期間を延長し、1兆5000億ルピーをかけ、1人当たり月6キロの配給を実施すると発表した。

 ただ、専門家は「配給制度のデジタル化が本当の意味でゲームチェンジャーとなるには、配給を管理するための書類の不備や技術的な問題など複数の課題を乗り越えなければならない」と指摘する。

 また、カーネギー・インディアのシニアアドバイザー、ラジェッシュ・バンサル氏は「配給制度は移住者の困難な状況を改善するための一手かもしれない。だが、適切な住居や正式な雇用、医療機関へのアクセスを持たないことやパンデミックに起因する先行きの不透明さなど、移住者の不安要因は他にもある。社会保障の給付を確実に受け取ることができるようにすることは不可欠だ」と話した。(ブルームバーグ Vrishti Beniwal)

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