海外情勢

観光立国タイの陰の功労者がコロナで困窮 性風俗労働者への公的支援乏しく

 タイは新型コロナウイルス感染が収束し、ほぼ全業種で休業措置が解除された。ただ深刻な打撃を受けている産業は多い。その一つが性風俗業だ。売春は数十万人がなりわいにし、観光大国タイを陰で支えてきたとされるが、厳しい入国制限で収入を絶たれたセックスワーカーの多くが困窮。公的支援は乏しく、非政府組織(NGO)頼みなのが実情だ。

 ビーチリゾートで知られる中部パタヤの歓楽街。「困ったことはない?」。NGO「スイング」のスタッフが消毒ジェルやせっけん、避妊具が入った袋を配りながら、バーの従業員に声を掛けていく。この通りのバーのほとんどは売春の斡旋(あっせん)をしているという。

 スイングは2004年、パタヤと首都バンコクで、セックスワーカーの人権保護や感染症予防の啓発を始めた。診療所も併設する。

 共同設立者のスラン・ジャンヤムさんは別の団体を含め30年以上、同様の支援に携わる。パタヤではエイズウイルス(HIV)が流行したこともあったが「これほど深刻な事態は初めて」と話す。

 パタヤでは客の多くが外国人旅行者だった。バーの営業は解禁されたが、厳しい入国制限が敷かれる。スランさんによると、生活苦から路上で客を取り、100バーツ(約340円)で体を売る人すらいる。

 政府は失業した非正規労働者らに月5000バーツを支給する救済策を実施。だが雇用証明が難しく、受け取れない人も多かった。パタヤのセックスワーカーが多い地区への行政による支援は、わずかなコメだけだ。

 借金返済のため売春をしているという女性はシングルマザーだ。「送金ができず、家族も生活できない」と途方に暮れる。移民の境遇も悲惨だ。出入国制限で母国にも帰れず、就労ビザがないため給付金もない。同性を相手にするカンボジア人男性は「どこにも行けない」と嘆く。

 黙認される場合が多いものの、タイで売春は違法。スイングは実態に即し、登録制にして管理するべきだと主張する。だが政府は「違法なものは違法」(プラユット首相)との建前を崩さない。

 スイングは企業などの寄付で、100万バーツの基金を設けた。日用品の入った袋を1日500個ほど配っている。スランさんは「セックスワーカーは数ある職業の中の一つ。その事実を社会は受け入れるべきだ」と差別撤廃を訴えている。(パタヤ 共同)

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