海外情勢

加速するインドの中国排除 ビザ審査を厳格化、教育機関の提携も制限

 6月に起きたヒマラヤの国境係争地での軍事衝突を機に中国への不信感を強めているインド政府が、国内で中国人・企業が行う活動に対する制限を強化している。中国人へのビザ(査証)発給時の審査を厳格化し、国内の大学と中国政府の関係も改めて調査する。

 挑発的動きと非難

 インド国防省は8月31日、中国人民解放軍が29日遅く「挑発的な軍事的動きを行った」と発表。同日のインド株式市場や通貨ルピー相場に影響を与えた。

 中国外務省の趙立堅報道官は29日の定例記者会見で、中国政府はこの問題についてインドと密接な意思疎通をしていると述べていた。インド軍と人民解放軍は6月15日に衝突し、インド軍の兵士20人が死亡するなど過去40年で最悪の事態となった。

 こうした中、インド政府は中国の影響力排除の動きを加速している。政府高官によると、外務省は中国国籍を持つビジネスマン、学者、専門家、権利擁護団体などにビザを発給する際には事前の安全保障上の調査が必要だとの通知を受けた。同様の措置は長年にわたりパキスタンに対し実施されているという。

 関係者によると、インドの大学と中国側との提携は劇的に減る可能性が高い。インド工科大学、バナーラス・ヒンドゥー大学など国内教育機関が中国政府出資の中国語普及機関「孔子学院」との関連で結んだ54の覚書について、インド政府は精査しているという。中国語コースを除き、中国の教育機関との協力は打ち切られる見込みだ。

 米政策研究機関、ブルッキングス研究所の上級研究員を務めるタンヴィ・マダン氏は「ここ数週間で取られた一連の措置は中国への過度な依存から脱するとともに、さまざまな分野で中国の直接的・間接的影響にさらされるリスクを減らすことを目的としている」とした上で「インドは中国政府からの報復の可能性と、それに応じるインド側の耐性の両面から影響を査定すべきだ」と指摘した。

 投資規制も強化

 インド政府は既に中国IT企業の北京字節跳動科技(バイトダンス)の「ティックトック」など数十の中国製アプリを禁止。中国からの投資に対する規制も厳格化している。米国や豪州も中国の影響力を制限するため同様の措置を取っている。

 豪州は2018年、中国共産党による学生への影響などへの警戒感から、内政干渉を阻止することを狙った法律を成立させた。昨年には中国の大学との共同研究を行う際の新たなガイドラインを策定している。

 インド、豪州、米国の3カ国とも第5世代(5G)移動通信システムの導入計画から中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を排除している。また、3カ国と日本は「日米豪印4カ国戦略対話(クアッド)」と呼ばれる外交・安全保障の体制を築いている。(ブルームバーグ Sudhi Ranjan Sen)

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