海外情勢

石油資源に“座礁”リスク…「期待の新星」にも暗雲 温暖化とコロナで需要減

 ここ数カ月で、欧州石油メジャーは数十億ドル規模の石油資源を「地中にとどめる」ことを認めている。気候変動問題に新型コロナウイルスによる需要減が追い打ちとなり、埋蔵量が確認されても投資額を回収できない「座礁資産」に転じるリスクが高まっているためだ。

 新型コロナ危機により世界で再生可能エネルギーへのシフトが一層加速しており、化石燃料の価格は今後数十年で予想以上に下落する一方、炭素排出コストは上昇する見通しだ。こうした中、一部の石油資産は将来的に採算が取れなくなる可能性がある。

 回収不能10%見通し

 石油業界は新型コロナが流行する以前から、エネルギーシフト、供給過剰、需要のピークアウトの兆候などの問題に悩まされていた。ノルウェーの調査会社ライスタッド・エナジーは新型コロナによって需要のピークが前倒しされ、資源探査や採掘を鈍らせる可能性が高いとみている。同社は世界の回収可能な石油資源の約10%(約1250億バレル)が「座礁」するとみる。

 こうした中、欧州石油メジャーが減損処理や新規プロジェクトの見直しを強いられている。7月にはフランスのトタルが炭素集約型資産を中心に80億ドル(約8500億円)の減損損失を計上。英BPは6月、事業ポートフォリオを見直し、一部の発見資源の開発を進めないことを決定したほか、8月には新たな国での石油探査を行わない方針を示した。

 ライスタッドのパルール・チョプラ上流調査担当副社長は、最も座礁資産リスクが高い事業の一つとして、石油・天然ガス会社ハスキー・エナジーとBPとの合弁による「サンライズ」など、カナダのオイルサンド事業を挙げた。砂岩から石油成分を抽出するオイルサンドは生産コストが高いだけでなく、他の生産形態と比べて二酸化炭素(CO2)排出量がとりわけ多いためだ。

 石油埋蔵量が最大37億バレルと推定される「サンライズ」プロジェクトは3段階に分けて実施され、最終的には日量20万バレル以上の生産を計画している。だが、日量6万バレルの第1段階開発は2015年に開始したものの、原油価格の低迷とパイプラインの容量制限などを背景に、今年3月以来生産量が日量1万バレルにまで落ち込んでいる。

 ハスキーとBPの両社とも次の開発段階の時期を明らかにしていない。英金融シンクタンクのカーボン・トラッカー・イニシアチブのアナリスト、マイク・コフィン氏は「採算性を確保するには現在の水準を大幅に上回る原油価格が必要であり、生産拡張は差し迫っていない」と指摘する。

 期待の新星にも暗雲

 かつて期待の新星とみられていた南太平洋上のフォークランド諸島のシーライオン油田の開発にも暗雲が垂れ込める。シーライオン油田を発見した英系石油開発企業ロックホッパー・エクスプロレーションは10年に17億バレル分の埋蔵量を確認したが、コロナ禍の需要減を受け、座礁資産化リスクが増している。

 ロックホッパーのパートナーである同業プレミア・オイルは今年に入り、シーライオン油田の第1段階開発を中断すると発表。7月には今後の開発の見通しが立たない状況から、2億ドル分の投資を償却した。

 ロックホッパーはイスラエルのナビタス・ペトロリアムが権益取得で協議中であるなどの理由を挙げ、シーライオン油田が座礁資産となるリスクは少ないと主張している。一方で、プレミア・オイルのトニー・デュラント最高経営責任者(CEO)によると、最終的な投資決定は早くても来年以降になるという。

 結局のところ、世界的な原油の供給過剰や、需要の長期見通しの不透明感、脱炭素に向けた圧力が高まっていることから、サンライズやシーライオンといったプロジェクトに対しては逆風が強まる見込みだ。

 米アクセンチュアのグローバル・エネルギー産業担当シニア・マネジングディレクターのムクシット・アシュラフ氏は「将来的に座礁資産が発生する。石油企業はその事実を受け入れなければならない」と指摘した。(ブルームバーグ Laura Hurst)

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