海外情勢

中国の洪水対策「スポンジシティ」めぐり不正横行 “ごみだらけ”の先行地区

 中国で、豪雨の際に街が雨水を吸収し、ゆっくりと川や貯水池に流す「スポンジシティ」と呼ばれる洪水対策への取り組みが進んでいる。中国は何世紀にもわたりほぼ毎年、大洪水に見舞われ、堤防やダム、運河などで川の流れを制御しようとしてきた。だが川の氾濫は続き、急速な都市化で状況はさらに悪化している。こうした中、政府はこれまでの対策を大転換した。

 公園に集めて濾過

 スポンジシティ構想は2015年に開始され、屋上庭園や湿地公園、水を通す舗装、地下貯水タンクを用い、最終的には中国の都市面積の約5分の4で降った雨の約70%を吸収したり再利用したりすることを目指している。

 中国では、雨水を吸収・保持するはずの草原や森、湖などの大部分が舗装などで失われ、機能が不十分な下水・排水設備に雨水が直接流れ込んでいる。これが都市の洪水の原因の一つとなっている。スポンジシティ構想はこうした現状を変えようとするものだ。

 重慶市の北東、巨大な国際展示場を中心に広がる悦来地区は、中央政府の認可を得てスポンジシティの試験的開発が進む都市の一つ。展示場公園は雨水を集中させるために周辺よりも低くされ、集めた水は水生植物で濾過(ろか)される。また、建物に降った雨は最寄りの公園に送られ、歩道には吸水性の素材が使用される。

 山に囲まれ嘉陵江と揚子江の2つの大河が合流する重慶市は、600キロメートルに及ぶ三峡ダム貯水池の最も上流に位置するものの、洪水対策として巨額の支出が続いている。三峡ダムは単独の洪水対策プロジェクトとして中国最大の240億ドル(約2兆5500億円)をかけ06年に完成。建設当初の主たる目的は、揚子江の毎年の氾濫を制御することだった。だが、1万年に1度の大洪水を防ぐ設計にもかかわらず、完成から10年もたたないうちに揚子江下流の武漢市は再び浸水に見舞われた。

 米ホバート・アンド・ウィリアム・スミス大学のダリン・マギー環境学教授は「三峡ダムは通常と異なる今年のような洪水では揚子江からの水量を全て蓄えることはできない。この先は気候変動で洪水被害はさらに深刻化するだろう」と話す。

 かつて「100の湖の街」と称され、洪水時に冠水する広大な氾濫原だった武漢市では、過去30年間に湖の約4分の3が建築目的で埋め立てられた。

 米シンクタンク、ウッドロー・ウィルソン国際センターの中国環境フォーラムのディレクター、ジェニファー・ターナー氏は「中国では揚子江沿いの湿地帯の大部分が消失し、水の逃げ場がない状態だ」と指摘する。

 一方、中国の国家発展改革委員会は、7月の南部の洪水被害を受け、今後数年で1兆2900億元(約20兆700億円)を投入する150のプロジェクトの施行を公約。プロジェクトはダムや貯水池、堤防の建設とみられる。

 ずさん管理や不正

 揚子江とその支流沿いの堤防は今や万里の長城を超える推定3万4000キロメートルに及ぶ。それでも1950年から2018年までの間に28万人が犠牲になり960万ヘクタール相当の作物が失われた。こうした大規模開発が次第に国民に受け入れられなくなり、政府も方針を転換していることがスポンジシティ構想の背景にある。

 重慶拠点の河川環境保護を目指す圧力団体創立者は「今すぐ開発をやめろというのは中国では現実的ではない」と語る。

 ただ、こうした中央政府主導の大規模環境戦略では、政府の認可と金を地方官僚や企業が独自の計画実行に利用するなど不正が横行する。重慶のタクシー運転手は「業者は森や草原を破壊し住宅を建て、スポンジシティと銘打つためにお飾りの木を植え、大金を手にする」と話す。さらに、金が支払われ開発が終了すれば、その後の維持にメリットを見いだす者は少ない。悦来地区で先行して進められた別のスポンジシティでは、雨水集積のための庭園はごみだらけ、雨水浄化施設は雑草に覆いつくされている。(ブルームバーグ Bloomberg News)

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