国内

預託法、来年改正も実効性に疑問 35年間で被害1兆円超に

 安愚楽牧場やジャパンライフなど、大規模な消費者被害が繰り返し起きた販売預託商法の禁止を、消費者庁が打ち出した。有識者検討会の報告書を受け、預託法を来年にも改正する。この商法が事実上放置されてきた約35年間、消費者が受けた被害総額は1兆円超とみられる。問題を長年訴えてきた被害者や専門家からは、禁止の実効性を疑問視する声も上がる。

 牛、磁気製品…

 「本質的に反社会的な性質があり、行為それ自体が無価値」。8月に公表された報告書は、問題点を明確に指摘した。販売預託商法の典型的な仕組みは(1)顧客に販売した商品を企業が預かる(2)企業は預かった商品を別の人に貸し付けるなどして運用、利益を生み出す(3)顧客に年数%の配当を出し、商品は企業が買い取る-。商品は安愚楽では牛で、ジャパンライフでは磁気製品だった。

 顧客には元本と配当が残り、定期預金と似ているが、企業にとって運営は非常に難しい。最低でも年数%の利益を常に出さねばならず、仮にそんな事業があるなら顧客の金を集めるより銀行の融資の方が低利でいい。

 結局、まともな事業がないまま、高配当を新規の契約金から出す自転車操業状態になり、配当のため新規契約を増やし、新規契約者への配当用に、さらに契約を増やす。

 巨額被害を生む詐欺的装置とも言えそうだ。預託法のきっかけとなった豊田商事の被害は2000億円で、安愚楽は4300億円、ジャパンライフの負債は2400億円、ケフィア事業振興会は2100億円を不正に集めたとされる。これだけで1兆円を上回る。

 一方で、預託法は無力だった。規制すべき商品を一つ一つ指定し、契約時の書類交付を義務付け、虚偽の説明による勧誘も禁じているが、この商法そのものが持つ危険性には触れなかった。

 網羅的調査には限度

 一橋大の松本恒雄名誉教授(消費者法)は「実質的には金融商品取引法上の『集団投資スキーム』でも、同法の規制対象にはならない。金融庁の厳しい監視の目から、預託法が悪質業者を守っていた」と分析。さらに「規制が常に後追い。業務停止処分を出しても無視されていた」と批判する。実際、ジャパンライフは何度も処分を受けたことを逆手に取り、「処分されても配当は滞らないので安全」と勧誘した。

 「法を改正しても、消費者庁の人員で抜け目なく禁止できるのか」。安愚楽で約4000万円の損失を被った東京都の川口瑞夫さん(56)は不安視している。

 安愚楽について「テレビや新聞でも宣伝しており、国が定期的に監査していると思っていた」が、消費者庁は破綻まで継続的な監査をせず、会員数分の牛が存在しない実態を把握していなかった。監査や規制が不十分だったと知り「がくぜんとした」と振り返る。

 松本教授も「巧みに宣伝文句や社名を変える業者をどう止めるか。消費者庁の人員で網羅的に調査や処分をするのは限度がある。罰則を引き上げ、実効性のある法にするべきだ」と話している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus