海外情勢

「ここは感染した場合、最悪の場所」 インド、地方のコロナ対応ずさん

 インド・ムンバイから車で約2時間の小さな町ボイサールでは、新型コロナウイルスは遠い場所の話だった。しかし、それも住民1人が新型コロナで亡くなるまでのことだった。

 35歳の家庭教師、ダニエル・トリブバンさんは4月、化学療法を受けるためムンバイに出掛けた父親を家に連れ帰る際に熱っぽさを感じた。検査を受けると新型コロナ感染が確認されたが、その後の地元の医療体制の対応はずさんだった。

 トリブバンさんは、公立病院に入院するとすぐにムンバイの私立施設に移送されることになった。しかしトリブバンさんが費用を支払えないことが分かると、救急車は途中で引き返した。公立病院に戻ったトリブバンさんは3日間、医師に診てもらえなかった。しかも、近くのベッドで高齢者の男性が亡くなった後も、12時間は遺体がそのまま放置されていたという。

 1週間後、トリブバンさんの血中酸素濃度は危険なレベルまで下がった。そして5月17日に亡くなり、ボイサールで確認された最初の新型コロナによる死者となった。

 トリブバンさんの兄、サミュエルさんはボイサールの行政庁舎内での最近のインタビューで、「医療体制がしっかりしていれば弟は命は落とさなかったと思う」と発言。「ここは新型コロナに感染した場合、最悪の場所だ」と訴えた。

 新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まって半年、先進国が通常の社会生活を取り戻そうと努める中、新型コロナはインドの人口13億人の7割が住む地方に広がりつつある。同国では現在、1日に確認される新規感染件数が9万件を超えており、新型コロナ感染症(COVID19)による累計死者数は約8万人に達している。しかも専門家は、実際の死者数はもっと多いと指摘している。

 インドの累計感染者は7日、ブラジルを超えて米国に次ぐ世界2番目の規模に達した。ナイジェリアやミャンマーなど、人口密度が高い他の貧困国で新型コロナの感染が拡大した場合どうなるかを示す形となった。未感染人口が多く、感染対策が未整備なインドが今後のある時点で、感染者数で米国を抜いて最多となるのは避けられないと見受けられる。(ブルームバーグ Ari Altstedter)

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