国内

耐震化率全国ワースト3 新潟県加茂市のやるせない事情「歴史とロマン優先」

 新潟県加茂市の小中学校の耐震化率が4月時点でわずか66・7%と、全国の市町村中、下から3番目の低さにある。新潟は中越地震(平成16年)や中越沖地震(19年)で甚大な被害を受けたこともあり、県内の大半の市町村は耐震化を100%完了している。なぜ同市で耐震化が進まないのか。(本田賢一)

 校舎の耐震化進まず

 学校施設は、子供が多くの時間を過ごすとともに、災害時には避難所になる。そのため、国も公立学校の耐震化を自治体に強く要請し、全国の小中学校の耐震化率は4月1日時点で99・4%となっている。

 同市には、市立小学校が7校、同中学校が5校あり、うち小学校6校と中学校2校で、校舎の耐震補強工事がまったく行われていないか、工事が途中で止まっている。ただ体育館は、全12小中学校で耐震化が完了している。

 小中学校の校舎や体育館の計34棟は、鉄骨・鉄筋コンクリート造りが33棟、木造が1棟。鉄骨・鉄筋コンクリート造りの33棟のうち22棟で耐震性能があると確認され、耐震化率は66・7%だった。ワースト3の根拠は、国が発表したこの数字だ。

 唯一の木造校舎、加茂西小は24年の耐震診断で、木造建物の耐震性能を表す指標「Iw値」が0・09だった。国は1・1以上必要としており、同校の耐震性能は極めて低い。しかし、耐震補強工事は行われていない。

 さらに驚くのは、耐震補強工事が必要な校舎12棟のうち10棟で、現状の耐震性能を調べる耐震診断すら行われていないことだ。

 歴史とロマン優先

 同市教育委員会の青柳芳樹庶務課長は、本紙の取材に耐震化が進まない理由を二つ挙げた。

 「生徒数が減少する中、多くの自治体は学校の統廃合を進める中で学校施設の耐震化を進めている。学校を統合する際に新校舎を建てたり、どちらかの校舎を耐震化してから統合したりといった具合だ。ところが加茂市では統廃合がまったく進んでいない」

 これが一つ目の理由だ。なぜ学校の統廃合が進まないのか。市政関係者はこう指摘する。

 「昨年5月まで市長を6期務めた小池清彦氏(83)は、学校は単に子供の学ぶ場というだけでなく、地域の歴史やロマンが凝縮されていると主張し、統廃合を行わない方針だった」

 同市では昨年4月に市長選が行われ、新人の藤田明美市長(49)が小池氏を破り当選した。

 「藤田氏は財政などの改革に聖域を設けず取り組むとしている。学校の統廃合も、地元の理解を得る必要があるためすぐにとはいかないが、徐々に進むのではないか」と市政関係者は期待する。

 補助金あっても不足

 もう一つの理由はお金である。

 「国は公立学校の耐震補強工事に補助金を出しているが、補強工事1平方メートル当たりの補助金単価が安いため、加茂市のように財政が厳しいところは補助金があっても耐震補強工事を実施できない」(青柳氏)

 市の財政は厳しく、藤田氏が市長就任早々に自身の市長報酬を15%減額し、財政立て直しに取り組んでいる状況。

 そんな同市が期待するのが国の緊急防災・減災事業債(緊防債)だ。指定避難所の学校施設であれば、耐震補強工事費用の7割が国からの普通交付税で措置されて戻ってくる。

 ところが、この制度は令和2年度までの期限付きで、工程を考えるともはや手遅れ。「市長会を通じて延長を要請している」(青柳氏)という。大阪市など全国各地の自治体からも期限延長の要請が出されており、国の対応に期待するしかない。

 加茂市の小中学校の耐震化は、現市長のもとで動き始めそうだが、その道のりは険しい。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus