専欄

難しい米との関係改善 菅政権への中国の期待と懸念 

 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 11月の米大統領選が近づくにつれ、両候補、とりわけトランプの対中強硬姿勢が目立つ。いずれの候補が当選しようとも米中関係の改善は期待できそうにない。それだけに中国にとって日本や東南アジア諸国、さらには欧州諸国などとの関係強化がより重要になっている。

 習近平の国賓訪日が実現しないまま安倍晋三が辞任したことは、中国外交にとって痛手となったかもしれない。中国外務省は安倍の辞任に際して、日中関係の改善における安倍の「重要な努力を積極的に評価」し、今後の両国関係の「持続的な改善と発展」への期待を表明した。

 また、共産党機関紙「人民日報」系列の国際情報紙「環球時報」の社説(8月29日付)は、中国は米国の全面的な戦略的封じ込めに直面しているため、日本との政治的摩擦を減らし、両国の国民感情の接近を図るべきだと主張した。

 さらに、日本は米国の同盟国だが、日本にとって中国は最大の貿易パートナーであると指摘し、対中関係で日米が完全に歩調を合わせる必然性はなく、日本が米国の対中政策から距離を置くよう働きかける余地があるとも述べ、日本は長期的には外交の独立性を追求するだろうと分析している。

 新政権の対中外交を論じた同紙の別の社説(9月15日付)は、当面、大きな変化はないとしたうえで、日本が米国一辺倒にならず、中国との協力関係を維持し続ける上でも、中国は市場の開放を拡大し、技術力を増強し、総合国力を強化することが必要だと述べている。

 同紙に掲載された、中国社会科学院日本研究所副所長らの論評(8月31日付)は、安倍辞任に伴う政権交代が両国関係に「衝撃や後退」をもたらさないよう、「安定的な発展、協力、ウィンウィン」を核心とする両国関係が日本の国益に合致することを新政権が明確に認識するよう、希望すると記している。

 これらの社説や論評からは、新政権の対中外交への期待とともに、日本が米国の対中政策に同調することへの強い懸念もうかがわれる。

 なお、安倍政権の経済政策などに対して、中国の研究者はかなり厳しい評価をしており、例えば、同日本研究所の研究員は「環球時報」に寄せた論評(9月4日付)で、「アベノミクスは短期的な効果はあったが、構造的な問題は未解決で、支払った代価は極めて大きい」と論じている。(敬称略)

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